技能実習生と労働基準関係法令 その2

今回も前回同様に、外国人技能実習生の受入れ企業として知っておくべき労働基準関係法令について、いくつかをご説明いたします。

1.中間搾取の禁止(労働基準法第6条) 何人も法律で許される場合のほか、他人の就業に介入して利益を得ることは禁止されています。違反例として、監理団体が自ら管理する口座に、事業主に技能実習生の賃金の一部を振り込ませて着服することが挙げられます。

2.労働基準法違反の契約の無効(労働基準法第13条) 労働基準法に定める基準に満たない労働条件は無効であり、無効となった部分は、労働基準法に定める基準によることとなります。

3.労働条件の明示(労働基準法第15条) 労働契約の締結に際し、労働者に対して、次の事項について労働条件通知書を交付する等により、労働条件を明示しなければならないことになっています。

  • 労働契約期間
  • 期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を更新する場合の基準
  • 就業場所及び従事すべき業務
  • 労働時間(始業・終業時間、休憩時間、休日等)
  • 賃金(賃金額、支払いの方法、賃金の締切り及び支払日)
  • 退職に関する事項(定年の有無、解雇事由等)

従って、技能実習生が実習実施機関との間で労働契約を結ぶにあたり、労働条件を書面で渡されなかった場合は、違反となります。

尚、実習実施機関には、書面は日本語に加えて、技能実習生の母国語によっても作成するなど、内容が技能実習生に十分に理解できるようにすることが求められています。

4.解雇の制限(労働基準法第19条) 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間、並びに産前産後休業期間及びその後30日間の解雇は禁止されています。従って、業務上の負傷が原因で休業し、働ける状態になって出勤したところ、即時解雇されたような場合は、違反となります。尚、1年契約等、期間の定めのある労働契約は、やむを得ない事由がない限り、契約期間の途中で解雇することはできません。(労働契約法第17条第1項)

5.解雇の予告(労働基準法第20条、第21条) 労働者を解雇する場合には、原則として30日以上前に予告することとされています。予告が行われない場合には、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当(予告期間が30日に満たない場合には、その不足する期間の平均賃金)の支払いを受けることができます。従って、予告なく即時解雇されたにもかかわらず、解雇予告手当が支払われなかったということであれば、違反となります。

6.休業手当(労働基準法第26条) 使用者の責に帰すべき事由により、労働者を休業させる場合には、休業手当(平均賃金の60%以上)の支払いが必要とされています。従って、「仕事がない」という理由で数日間休業させられたが、その分の休業手当が賃金支払日に支払われなかった場合は、違反となります。

次回も引き続き、受入れ企業として知っておくべき労働基準関係法令について、ご説明いたします。

技能実習生と労働基準関係法令について

厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署は連名で、「外国人技能実習生のみなさんへ ~日本における労働基準関係法令について~ 」という書面を発行しています。日本の受入れ企業としても、基本となる労働関係法令については知っておく必要がありますので、今回はそれについてご説明いたします。

上記書面では、冒頭次のように書かれています。「外国人技能実習生のみなさんにも労働基準関係法令が適用され、労働者として日本人と同様に労働条件が守られます。」そして、次のように続きます。「以下のような事案は日本の労働基準関係法令に違反するおそれがあります。」以下とは次の8項目です。

  1. 会社の備品を壊したら、罰金として5万円支払うことになっています。
  2. 賃金の一部を強制的に貯蓄させられ、預金通帳は事業主が持っています。
  3. 賃金支払日を過ぎても賃金が支払われていません。
  4. 1日8時間を超えて労働しましたが、その分の賃金が350円しか支払われません。
  5. 寄宿舎から外出する際、使用者の承認を受けなければならず、不自由です。
  6. 最低と決められた賃金額は時間額1,000円なのですが、実際には時間額600円で計算して賃金が支払われています。
  7. 技能実習生として働き始めて1年以上経ちましたが、健康診断を受診していません。
  8. 仕事中にケガをしたのですが、治療費や休業の補償がなされません。

なぜ、どこが労働基準関係法令に違反する恐れがあるのかも、この書面に記されています。

1.については、労働基準法第16条で、労働契約の不履行について違約金を定め又は損害賠償額を予定する契約は禁止されていますので、「会社の備品を壊したら罰金として5万円支払う契約をあらかじめさせられた。」という行為は違反となります。但し、現実に労働者の責任により発生した損害について賠償請求することは禁止されていません。

2.については、労働基準法第18条で、労働契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約は禁止されていますので、「事業主が労働者名義の銀行口座に賃金の一部を預け入れ、その通帳を事業主が保管していた」という行為は違反となります。

3.については、労働基準法第24条で、賃金は、①通貨で、②労働者に対し直接、③全額を、④各月に1回以上、⑤一定期日を定めて、支払わなければなりませんので、「賃金支払日を過ぎても賃金が支払われなかった」ということは違反となります。

4.については、労働基準法第37条に、時間外、休日及び深夜の割増賃金が書かれています。農業・畜産・水産業については、時間外、休日労働に関する割増賃金の規定は適用されませんが、労働契約で時間外、休日労働をした場合に割増賃金を支払うことにしている場合には、その支払いが必要となります。割増賃金の割増率は次の通りです。

・時間外労働割増賃金:25%以上の率(1か月60時間を超える時間外労働については50%になります。但し中小企業は当分の間、適用が猶予されます。)

・深夜労働割増賃金(午後10時~午前5時):25%以上の率

・休日労働割増賃金:35%以上の率

注意が必要なのは、技能実習生自身の合意があっても、法定の割増率で計算した額を下回ることは労働基準法違反となることです。「1日8時間の契約だが、8時間を超えて労働させられても、その時間外労働に対して25%以上の率で割増賃金が支払われなかった」という例は、違反となります。

5.については、労働基準法第96条等で、寄宿舎に労働者が居住する場合において、例えば、外出の際に使用者の承認を必要とするなど、労働者の生活の自由が制限されるようなことは禁止されています。また、寄宿舎には避難用階段や消火設備などの定められた設備が設置されている等の措置が必要とされています。従って、「寄宿している技能実習生が外出や外泊する際、使用者の承認を受けなければならなかった。」という例は、違反となります。

6.については、最低賃金法で、賃金等は最低賃金額以上でなければなりません(第4条)となっておりますので、たとえ最低賃金額を下回る賃金を定めた労働契約を締結しても、その賃金額は無効となり、支払われる賃金額は最低賃金額となります。そして、最低賃金は以下の2種類があり、同時に適用される場合は、どちらか高い方の金額が適用されます(第6条)

・地域別最低賃金(都道府県ごとに1つずつ定められている最低賃金)

・特定(産業別)最低賃金(特定の産業ごとの基幹的労働者を対象に定められている最低賃金)

「地域別最低賃金が時間額1,000円であるにもかかわらず、技能実習生との間に時間額600円とする労働契約を締結し、その額しか支払わなかった。」ということだと、違反となります。

7.については、労働安全衛生法第66条で、事業者は労働者を雇い入れた時及び一定期間(1年又は6か月以内)ごとに健康診断を実施しなければならないとされています。従って、「技能実習生として働き始めて1年以上経過したが、健康診断を受診させられなかった。」という例は、違反となります。

8.については、労働者災害補償保険法の規定を知っておく必要があります。それによりますと、労働者が業務上の事由又は通勤により負傷等を被った場合等に、被災した労働者や遺族の請求に基づき、主に次のような給付が受給できます。

  • 療養が必要な場合、無償での治療又は療養の費用 ⇒ 療養(補償)給付
  • 療養のため労働することができないため賃金を受けることができない場合、その4日目からの給付基礎日額の80% ⇒ 休業(補償)給付
  • 傷病等が治った後もその障害が一定の程度にある場合、傷害の程度に応じ年金または一時金 ⇒ 障害(補償)給付
  • 死亡した場合、遺族の数等に応じ年金または一時金 ⇒ 遺族(補償)給付

外国からの技能実習生についても、日本人の労働者と同様に労働基準関係法令が適用されるという認識が必要ですね。

技能実習生に係る厚生年金保険について

今回は、技能実習生に係る厚生年金保険の基礎について、ご説明いたします。

① 障害の状態になったとき、「障害厚生年金」が受けられます。万一、技能実習期間中の病気やけがにより一定の障害の状態になったときには、その状態に応じて給付を受けられます。給付を受けるためには、請求書に年金手帳、戸籍、診断書などの書類を添えて、年金事務所に請求する必要があります。必要な書類は、請求する方の配偶者や子の有無、病歴などにより異なりますので、年金事務所に問い合わせることになります。ちなみに、東京都内の年金事務所の管轄区域はこちらです。

② 亡くなったとき、「遺族厚生年金」が支給されます。万一、技能実習期間中に亡くなられたとき、亡くなわれた方によって生計が維持されていた遺族に遺族厚生年金が支給されます。支給対象となる遺族は、配偶者、子、父母、孫、祖父母です(妻以外は年齢の条件があります)。遺族が、亡くなられた方の子又は子のある配偶者の場合には、遺族厚生年金に加えて、遺族基礎年金が支給されます(子は年齢の条件があります)。給付を受けるためには、請求書に年金手帳や戸籍、死亡診断書などの書類を添えて、年金事務所に請求する必要があります。必要な書類は、請求される方の子の有無や亡くなわれた方の死亡の原因により異なりますので、この場合も年金事務所に問い合わせます。

③ 帰国するときや高齢になったとき、「脱退一時金」や「老齢厚生年金」が支給されます。<脱退一時金>6か月以上の厚生年金保険の加入期間を有し、技能実習期間中に障害や死亡といった保険事故が発生することなく帰国されるときには、脱退一時金を請求することができます。請求に当たっては、請求書に次の書類を添付して日本年金機構に提出します。パスポートの写し(氏名、生年月日、国籍、署名、在留資格が確認できるページ)、住民票の除票の写しなど、日本国内に住所を有しなくなったことを明らかにすることができる書類、銀行が発行した請求者本人の口座証明書等、国民年金手帳その他の基礎年金番号を明らかにすることができる書類。また、脱退一時金の受給要件として、日本年金機構が請求書を受理した日に、日本に住所を有していないことが必要ですので、帰国前にお住いの市区町村に転出届を提出します。<老齢厚生年金>日本と年金通算の社会保障協定を結んでいる国の年金加入期間のある方については、将来、年金を受給できる年齢になったときに、厚生年金保険の加入期間と協定相手国の年金加入期間を通算して、日本や相手国の老齢年金を受け取ることができる場合があります。但し、脱退一時金を受け取ると、脱退一時金を請求する以前の全ての厚生年金保険の加入期間は年金の受給に必要な資格期間ではなくなります。従って、脱退一時金を請求する際には請求書の注意書きをよく読んで慎重に検討する必要があります。尚、2017年8月より、年金(老齢給付)の受給に必要な資格期間が10年に短縮されています。

年金通算の社会保障協定を締結している相手国(2018年8月現在)は、ドイツ、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピンです。

④ 3号技能実習生として実習を受けようとする方への追加のご案内<脱退一時金>についてです。脱退一時金の支給金額は、日本の年金制度に加入していた機関に応じて、36か月(3年)を上限として計算されます。このため、3号技能実習生として実習を受けようとする方が、加入期間に応じた脱退一時金の受給を希望される場合には、技能実習2号終了後及び技能実習3号終了後の帰国の都度、請求することが必要です。尚、3号技能実習生として再入国することが見込まれる場合には、技能実習2号終了後の請求をするにあたって、一時帰国時に必ず転出届を提出し、日本に再入国する前に脱退一時金の請求書が日本年金機構に到達するようにしておきます。

技能実習生の厚生年金保険への加入について

技能実習生を受け入れるに当たり、監理団体は当然として、実習実施者(受入れ企業)は、厚生年金保険への加入について、理解して手続きをすることが必要です。

厚生労働省は、「技能実習生の厚生年金保険への加入手続きのお願い」を事業主の皆様へという形で発信しています。こちらです。それによりますと、次のようなことが書かれています。

  • 私たちの人生には、本人又は家族の自立した生活が困難になるリスクがありますが、そのリスクに個人で備えるには限界があります。
  • 技能実習生が日本に滞在中にも、同じように、自立した生活が困難になるリスクがあります。
  • 公的年金制度は、あらかじめ保険料を納めておき、必要な時に給付を受ける制度ですが、このようなリスクへの保障の必要性については国籍による違いはありませんj。
  • このため、日本に住む外国人についても、厚生年金保険の適用事業所で就労している方は、厚生年金保険に加入することとされています。
  • 上記のような厚生年金制度の目的をご理解いただき、技能実習生について厚生年金保険への加入手続きをお願い致します。
  • 技能実習生の皆様が厚生年金保険制度について理解されるよう、別添のとおりお知らせ頂きますよう、お願い致します。

そして、「厚生年金保険のご案内」が技能実習生の皆様へという形で添えられています。日本語文に英語が併記されています。

それによりますと、冒頭では、厚生年金保険の保険料は、受入れ企業と本人が折半で負担することとされており、本人負担分は給与から控除されると書かれています。

そのあとに「受けられる給付」として、①障害の状態になったときの障害厚生年金、②亡くなったときの遺族厚生年金、③帰国するとき・高齢になったときの脱退一時金・老齢厚生年金、④3号技能実習生として実習を受けようとする方への追加のご案内(脱退一時金)がまとめて書かれています。どれも基本的かつ重要なことです。

受入れ企業と技能実習生が、公的年金についての正しい理解をしたうえで、受入れ企業は確実に加入手続きをする必要があります。

技能実習制度 不正行為に対する処分について

今回は、技能実習制度における、不正行為に対する処分についてご説明いたします。

一昨日令和元年9月6日、法務省出入国在留管理庁と厚生労働省は、複数の企業について、技能実習計画の認定の取り消しと改善の命令を発表しました。その中で、日本を代表する企業である日立製作所が改善命令処分を受けています。出入国在留管理庁の発表はこちらです。厚生労働省からの発表はこちらです。内容は同じです。

技能実習の現行制度によると、外国人技能実習機構や主務大臣等は、定期的な実地検査、技能実習生からの相談・申告、労働基準監督機関・地方入管局等からの通報などに基づき、実地検査等を行うことになります。その結果、許可基準違反や法令違反等があれば、主務大臣等が、事業者名等を公表し、①許可・認定の取り消し、②業務停止命令、③改善命令の処分を行います。

①許可・認定の取消しは、重大な許可・認定基準違反、法令違反等があれば、この処分となります。

②業務停止命令は、許可基準違反や法令違反に対し、期間を定めて業務停止を命令するもので、同時に改善命令を出すこともあります。

③改善命令は、出入国・労働関係法令(技能実習法を含む)違反があれば、期限を定めて改善を命令するものです。

※業務停止命令・改善命令に違反した場合の罰則もあります。

今回の発表資料を読みますと、日立製作所のへの処分理由としては、認定計画に従って技能実習を行わせていなかったこととしており、改善命令の内容としては、認定計画に従った適正な技能実習を実施するための体制の構築に関するものとしています。

ここで、技能実習受入れ企業として再度認識が必要なこととしては、新しい技能実習制度では、開発途上地域等の経済発展を担う人づくりに協力するという制度趣旨を徹底するため、管理監督体制を強化するとともに、技能実習生の保護等を図るとされていることです。

介護職種の追加要件について

今回は、技能実習制度における「介護職種」の追加要件について概略をご説明いたします。

介護については、平成29年11月に技能実習の対象職種に追加されましたが、高齢者へのサービス提供が仕事となることから、介護修得レベルの追加要件や監理団体による実習実施機関に対する管理の徹底等、追加の要件が課されています。

まず、技能実習生に関しての要件ですが、技能実習制度本体の要件に加えて、以下の要件を満たす必要があります。

  • 第1号技能実習(1年目) 日本語能力試験のN4に合格している者
  • 第2号技能実習(2年目) 日本語能力試験のN3に合格している者

次に、実習実施者・実習内容に関する要件ですが、技術実習制度本体の要件に加えて、以下の要件を満たす必要があります。

  • 技能実習指導員のうち1名以上は、介護福祉士の資格を有する者その他これと同等以上の専門的知識及び技術を有すると認められる者(看護師等)であること。
  • 技能実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を選任していること。
  • 技能実習を行わせる事業所が、介護等の業務(利用者の居宅においてサービスを提供する業務を除く)を行うものであること。
  • 技能実習を行わせる事業所が、開設後3年以上経過していること。
  • 技能実習生に夜勤業務その他少人数の状況下での業務又は緊急時の対応が求められる業務を行わせる場合にあっては、利用者の安全の確保のために必要な措置を講ずることとしていること。具体的には、技能実習制度の趣旨に照らし、技能実習生以外の介護職員を同時に配置することが求められるほか、業界ガイドラインにおいても技能実習生以外の介護職員と技能実習生の複数名で業務を行う旨を規定していることや、夜勤業務等を行うのは2年目以降の技能実習生に限定する等の努力義務を業界ガイドラインに規定することなどです。
  • 技能実習を行う事業所における技能実習生の数が一定数を超えないこと。
  • 入国後講習については、基本的な仕組みは技能実習法本体によるが、日本語学習(240時間(N3程度取得者は80時間))と介護導入講習(42時間)の受講を求めることとする。また、講師に一定の要件を設ける。

最後に、監理団体に関する要件についてですが、「介護」職種の場合は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 次のいずれかに該当する法人であること。①商工会議所・商工会、中小企業団体、職業訓練法人、公益社団法人又は公益財団法人、②その法人の目的に介護事業の発展に寄与すること等が含まれる全国的な医療又は介護に従事する事業者から構成される団体(その支部を含む)であること。
  • その役職員に介護職として5年以上の経験を有する介護福祉士等(看護師等)がいるものであること。
  • 「介護」職種における第3号技能実習の実習監理及び受入れ人数枠拡大の可否(いわゆる「介護」職種における優良要件)は、「介護」職種における実績等をもとに判断すること。

以上のように、「介護」職種の作業の特有性を踏まえて、他の職種の要件に更に要件を加えて、介護サービスの質を担保するとともに、利用者の不安を招かないようにしているわけです。

外国の送出し機関について

今回は、技能実習制度における監理団体の許可基準のひとつである、「基準を満たす外国の送出機関と、技能実習生の取次ぎに係る契約を締結していること」の、「外国の送出機関」について、ご説明いたします。

技能実習法第23条第2項では、外国の送出機関とは、団体監理型技能実習生になろうとする者からの団体監理型技能実習に係る求職の申込みを適切に日本の監理団体に取り次ぐことができる者として主務省令で定める要件に適合するものとされています。

そこで、外国の送出機関の要件にはどんなものがあるかというと、下記のようになっています。

  1. 所在する国の公的機関から技能実習の申込みを適切に日本の監理団体に取り次ぐことができるものとして推薦をうけていること
  2. 制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者のみを適切に選定して、日本への送り出しを行なうこと
  3. 技能実習生等から徴収する手数料その他の費用について、算出基準を明確に定めて公表するとともに、その費用について技能実習生等に対して明示し、十分に理解をさせること
  4. 技能実習を修了して帰国した者が、修得した技能を適切に活用できるよう、就職先のあっせんその他の必要な支援を行うこと
  5. フォローアップ調査への協力等、法務大臣、厚生労働大臣、外国人技能実習機構からの要請に応じること
  6. 送出し機関又はその役員が、日本又は所在する国の法令に違反して、禁錮以上の刑又はこれに相当する外国の法令による刑に処せられ、刑の執行の終了等から5年を経過しない者でないこと
  7. 所在する国又は地域の法令に従って事業を行うこと
  8. 保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、技能実習生の日本への送出しに関連して、技能実習生又はその家族等の金銭又はその他の財産を管理しないこと
  9. 技能実習に係る契約不履行について、違約金を定める契約や不当に金銭その他の財産の移転をする契約を締結しないこと
  10. 技能実習生又はその家族等に対して、8,9の行為が行われていないことを技能実習生から確認すること
  11. 過去5年以内に偽造・変造された文書の使用などの行為を行っていないこと
  12. その他、技能実習の申込みを適切に日本の監理団体に取り次ぐために必要な能力を有すること

次に、日本との間で2国間取決めを作成した国について、送出し機関の政府が、上記1から12までの確認を行い、適切な送出し機関を認定することになっています。

平成31年3月時点では、次の13か国との間で技能実習に関する2国間取決めが交わされています。ベトナム、カンボジア、インド、フィリピン、ラオス、モンゴル、バングラデシュ、スリランカ、ミャンマー、ブータン、ウズベキスタン、パキスタン、タイ。

外部役員及び外部監査の措置について

今回は、技能実習制度における監理団体の許可基準のうち、外部役員及び外部監査の措置について、ご説明いたします。

技能実習法第25条第1項第5号では、監理事業を行おうとする者は、外部役員を置いていること又は外部監査の措置を講じていることとされています。

まず、外部役員についてですが、外部役員の役割は、実習実施者に対する監査等の業務が適正に実施されているかの確認を、法人内部において担当することとなります。

外部役員の要件には次のようなものがあります。

① 過去3年以内に指定された講習を受講した者(但し経過措置として令和2年3月31日まで適用はなし)

② 下記に該当する者でないこと

  1. 実習監理を行う対象の実習実施者又はその現役若しくは過去5年以内の役職員
  2. 過去5年以内に実習監理を行った実習実施者の現役又は過去5年以内の役職員
  3. 1、2の者の配偶者又は二親等以内の親族
  4. 申請者(監理団体)の現役又は過去5年以内の役職員
  5. 申請者(監理団体)の構成員(申請者が実習監理する団体監理型技能実習の職種に係る事業を営む構成員に限る)又はその現役又は過去5年以内の役職員
  6. 傘下以外の実習実施者又はその役職員
  7. 他の監理団体の役職員
  8. 申請者(監理団体)に取次ぎを行う外国の送出し機関の現役又は過去5年以内の役職員
  9. 過去に技能実習に関して不正等を行った者など、外部役員による確認の公正が害される恐れがあると認められる者

但し、4と7について、監理団体に係る業務の適正な執行の指導監督に関する専門的な知識と経験を有する役員(専門的な知識の経験に基づき現に監理事業に従事している員外役員)及び指定外部役員に指定されている役員は外部役員として認められます。

③ 外部役員は、監理団体の各事業所について監査等の業務の遂行状況を3ヶ月に1回以上確認し、その結果を記載した書類を作成すること。

次に、外部監査の措置についてですが、外部監査人(法人でも可能です)の役割は、実習実施者に対する監査等の業務が適正に実施されているかの監査を、法人外部から実施することとなります。

外部監査人の要件と業務は次の通りです。

① 過去3年以内に指定された講習を受講した者でなければなりません。(但し経過措置として令和2年3月31日まで適用はなし)

② 外部監査人は、上記の1から9までに相当する者及び法人であって監理団体の許可の欠格事由に該当する者、個人であって監理団体の許可に係る役員関係の欠格事由に該当する者であってはなりません。

③ 外部監査人は、監理団体の各事業所について監査等の業務の遂行状況を3ヶ月に1回以上確認し、その結果を記載した書類を作成すること。

④ 外部監査人は、監理団体が行う実習実施者への監査に、監理団体の各事業所につき1年に1回以上同行して確認し、その結果を記載した書類を作成すること。

外部役員を置くにせよ、外部監査を選ぶにせよ、外部からしっかりとチェックしてもらうという心構えが大切となります。

監理団体の許可基準について

今回は、技能実習制度における監理団体の許可基準についてご説明いたします。

技能実習法第23条及び第25条では、監理事業を行おうとする者は、主務大臣の許可を受けなければならないとされており、その許可に当たっては許可基準が設けられ、その許可基準に適合しなければ許可を受けることができません。

監理団体の主な許可基準は次の通りです。

① 営利を目的としない法人であること 例えば、商工会議所や商工会、中小企業団体、職業訓練法人、農業協同組合、漁業協同組合、公益社団法人、公益財団法人などです。

② 監理団体の業務の実施の基準に従って事業を適正に行うに足りる能力を有すること まず、実習実施者に対する3か月に1回以上の定期監査では、監査は以下の方法によることが必要です。ア)技能実習の実施状況の実地確認、イ)技能実習責任者及び技能実習指導員から報告を受けること、ウ)在籍技能実習生の4分の1以上との面談、エ)実習実施者の事業所における設備の確認及び帳簿書類等の閲覧、オ)技能実習生の宿泊施設等の生活環境の確認。 第2に、第1号の技能実習生に対する入国後講習の実施です。これについては、適切な者に対しては委託可能であることが明確化されました。第3に、技能実習計画の作成指導について、指導に当たり技能実習を実施する事業所及び技能実習生の宿泊施設を確認し、適切かつ効果的に実習生に技能等を修得させる観点からの指導は、技能等に一定の経験等を有する者が担当することとなります。第4に、技能実習生からの相談対応については、技能実習生からの相談に適切に応じ、助言・指導その他の必要な措置を実施することとされています。

③ 監理事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有すること

④ 個人情報の適正な管理のため必要な措置を講じていること

⑤ 外部役員または外部監査の措置を実施していること

⑥ 基準を満たす外国の送出し機関と、技能実習生の取次に係る契約を締結していること

⑦ 第3号技能実習の実習監理を行う場合、優良要件に適合すること

⑧ 上記の①から⑦のほか、監理事業を適正に遂行する能力を保持していること 具体的には、下記を満たさない場合は、監理事業を適正に遂行する能力があるとは判断されません。

  • 監理費は、適正な種類及び額の監理費をあらかじめ用途及び金額を明示した上で徴収(法第28条)
  • 自己の名義をもって、他人に監理事業を行わせてはならないこと(法第38条)
  • 適切な監理責任者が事業所ごとに選任されていること(法第40条)尚、監理責任者は事業所に所属し、監理責任者の業務を適正に遂行する能力を有する常勤の者でなければなりません。

尚、太字の部分が旧制度からの変更点となります。

技能実習計画の認定基準について

今回は、技能実習計画の認定基準について、重要な点や旧制度からの変更点に絞ってご説明いたします。

まず、技能実習法第9条では、技能実習を行わせようとする者は、技能実習生ごとに地濃実習計画を作成し、認定を受けることができるとされており、その技能実習計画の適切性を確保するために、認定の基準が設けられています。

次に、技能実習計画の主な認定基準として、以下のようなものがあります。

① 習得等をさせる技能が技能実習生の本国において修得等が困難な技能等であること

② 技能実習の目標について、第3号の目標が技能検定2級又はこれに相当する技能実習評価試験の実技試験への合格とされました。

③ 技能実習の内容については、第3号の技能実習生の場合は、第2号終了後に一か月以上帰国していることとされました。また、技能実習生や家族等が保証金の徴収や違約金の定めをされていないことを、技能実習生自身が作成する書面によって明らかにさせるようにしています。更に、複数職種の場合は、いずれも2号移行対象職種であること、相互に関連性があること、合わせて行う合理性があることとされています。

④ 実習を実施する期間は、第1号は1年以内、第2号・第3号は2年以内であること

⑤ 前段階における技能実習(第2号は第1号、第3号は第2号)の際に定めた目標が達成されていること

⑥ 技能等の適正な評価の実施が、技能検定、技能実習評価試験等によって行うこととされました。

⑦ 適切な体制・事業所の設備、責任者の選任については、各事業所ごとに選任される技能実習責任者(技能実習の実施に関する責任者)は、技能実習に関与する職員を監督することができる立場にあり、かつ、過去3年以内に技能実習責任者に対する講習を修了した常勤の役職員とされました(但し、講習については、経過措置として、令和2年3月31日まで適用無し)。

⑧ 許可を受けている監理団体による実習監理を受けること(団体監理型技能実習の場合)

⑨ 日本人との同等報酬等、技能実習生に対する適切な待遇の確保については、報酬の額が日本人と同等以上であることとされ、これを説明する書類を添付させ、申請者に説明を求めることとされました。また、入国後講習に専念するための措置等が図られていることとされ、食費、居住費等名目のいかんを問わず実習生が定期に負担する費用について、実習生との間で適正な額で合意がなされていることとして、費用の項目・額を技能実習計画に記載、技能実習生が理解したことや額が適正であることを示す書類を添付させることにしています。

⑩ 優良要件への適合(第3号技能実習の場合)が設けられました。

⑪ 技能実習生の受入れ人数の上限を超えないこととされ、新制度で人数枠を見直しています。

尚、③⑦⑨⑪については、事業所管大臣が告示で要件を定めた場合は、実習実施者又は監理団体は、その要件の基準を満たす必要があります。