技能実習生と労働基準関係法令について

厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署は連名で、「外国人技能実習生のみなさんへ ~日本における労働基準関係法令について~ 」という書面を発行しています。日本の受入れ企業としても、基本となる労働関係法令については知っておく必要がありますので、今回はそれについてご説明いたします。

上記書面では、冒頭次のように書かれています。「外国人技能実習生のみなさんにも労働基準関係法令が適用され、労働者として日本人と同様に労働条件が守られます。」そして、次のように続きます。「以下のような事案は日本の労働基準関係法令に違反するおそれがあります。」以下とは次の8項目です。

  1. 会社の備品を壊したら、罰金として5万円支払うことになっています。
  2. 賃金の一部を強制的に貯蓄させられ、預金通帳は事業主が持っています。
  3. 賃金支払日を過ぎても賃金が支払われていません。
  4. 1日8時間を超えて労働しましたが、その分の賃金が350円しか支払われません。
  5. 寄宿舎から外出する際、使用者の承認を受けなければならず、不自由です。
  6. 最低と決められた賃金額は時間額1,000円なのですが、実際には時間額600円で計算して賃金が支払われています。
  7. 技能実習生として働き始めて1年以上経ちましたが、健康診断を受診していません。
  8. 仕事中にケガをしたのですが、治療費や休業の補償がなされません。

なぜ、どこが労働基準関係法令に違反する恐れがあるのかも、この書面に記されています。

1.については、労働基準法第16条で、労働契約の不履行について違約金を定め又は損害賠償額を予定する契約は禁止されていますので、「会社の備品を壊したら罰金として5万円支払う契約をあらかじめさせられた。」という行為は違反となります。但し、現実に労働者の責任により発生した損害について賠償請求することは禁止されていません。

2.については、労働基準法第18条で、労働契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約は禁止されていますので、「事業主が労働者名義の銀行口座に賃金の一部を預け入れ、その通帳を事業主が保管していた」という行為は違反となります。

3.については、労働基準法第24条で、賃金は、①通貨で、②労働者に対し直接、③全額を、④各月に1回以上、⑤一定期日を定めて、支払わなければなりませんので、「賃金支払日を過ぎても賃金が支払われなかった」ということは違反となります。

4.については、労働基準法第37条に、時間外、休日及び深夜の割増賃金が書かれています。農業・畜産・水産業については、時間外、休日労働に関する割増賃金の規定は適用されませんが、労働契約で時間外、休日労働をした場合に割増賃金を支払うことにしている場合には、その支払いが必要となります。割増賃金の割増率は次の通りです。

・時間外労働割増賃金:25%以上の率(1か月60時間を超える時間外労働については50%になります。但し中小企業は当分の間、適用が猶予されます。)

・深夜労働割増賃金(午後10時~午前5時):25%以上の率

・休日労働割増賃金:35%以上の率

注意が必要なのは、技能実習生自身の合意があっても、法定の割増率で計算した額を下回ることは労働基準法違反となることです。「1日8時間の契約だが、8時間を超えて労働させられても、その時間外労働に対して25%以上の率で割増賃金が支払われなかった」という例は、違反となります。

5.については、労働基準法第96条等で、寄宿舎に労働者が居住する場合において、例えば、外出の際に使用者の承認を必要とするなど、労働者の生活の自由が制限されるようなことは禁止されています。また、寄宿舎には避難用階段や消火設備などの定められた設備が設置されている等の措置が必要とされています。従って、「寄宿している技能実習生が外出や外泊する際、使用者の承認を受けなければならなかった。」という例は、違反となります。

6.については、最低賃金法で、賃金等は最低賃金額以上でなければなりません(第4条)となっておりますので、たとえ最低賃金額を下回る賃金を定めた労働契約を締結しても、その賃金額は無効となり、支払われる賃金額は最低賃金額となります。そして、最低賃金は以下の2種類があり、同時に適用される場合は、どちらか高い方の金額が適用されます(第6条)

・地域別最低賃金(都道府県ごとに1つずつ定められている最低賃金)

・特定(産業別)最低賃金(特定の産業ごとの基幹的労働者を対象に定められている最低賃金)

「地域別最低賃金が時間額1,000円であるにもかかわらず、技能実習生との間に時間額600円とする労働契約を締結し、その額しか支払わなかった。」ということだと、違反となります。

7.については、労働安全衛生法第66条で、事業者は労働者を雇い入れた時及び一定期間(1年又は6か月以内)ごとに健康診断を実施しなければならないとされています。従って、「技能実習生として働き始めて1年以上経過したが、健康診断を受診させられなかった。」という例は、違反となります。

8.については、労働者災害補償保険法の規定を知っておく必要があります。それによりますと、労働者が業務上の事由又は通勤により負傷等を被った場合等に、被災した労働者や遺族の請求に基づき、主に次のような給付が受給できます。

  • 療養が必要な場合、無償での治療又は療養の費用 ⇒ 療養(補償)給付
  • 療養のため労働することができないため賃金を受けることができない場合、その4日目からの給付基礎日額の80% ⇒ 休業(補償)給付
  • 傷病等が治った後もその障害が一定の程度にある場合、傷害の程度に応じ年金または一時金 ⇒ 障害(補償)給付
  • 死亡した場合、遺族の数等に応じ年金または一時金 ⇒ 遺族(補償)給付

外国からの技能実習生についても、日本人の労働者と同様に労働基準関係法令が適用されるという認識が必要ですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。