建設業許可申請 その5

今回は、建設業許可を受けるための、その他の要件についてご説明いたします。

前回まで、建設業許可を受けるための5つの要件のうち、①経営業務の管理責任者が常勤でいること、②専任の技術者を営業所ごとに常勤で置いていること、の2つをご案内しました。この2つが特に重要だったのですが、残りの3つの要件も備えておく必要があります。

請負契約に関して誠実性を有していること

法律では、請負契約に関し、不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者ではないこと、としています。法人や役員、個人事業主、支配人、支店長、営業所長等が対象です。「不正な行為」とは、請負契約の締結又は履行の際の詐欺、脅迫等、法律に違反する行為です。一方、「不誠実な行為」とは、工事内容、工期等、請負契約に違反する行為です。

請負契約を履行するに足る財産的基礎等のあること

一般建設業の許可を新規で受ける場合、次のいずれかに該当することが必要です。

①自己資本が500万円以上あること。 ⇒ 最近は資本金500万円以上の企業は少ないので、500万円未満の場合は、②を証明することになります。

②500万円以上の資金調達能力があること。 ⇒ 取引銀行から預金残高証明書を取り寄せます。申請受理日を基準として1か月以内証明が必要であり、その額が500万円以上であることです。

欠格要件等

欠格要件に該当するものは、許可を受けられません。法人や役員、個人事業主、支配人、支店長、営業所長等が、対象となります。

具体的な欠格要件は、東京都の場合、こちらの手引き9ページをご覧ください。

この中の⑥について、「刑法の特定の規定」とは、例えば暴行、傷害、窃盗などです。

ここまで、一般の建設業許可の申請について、ご説明してきました。

次回からは、産業廃棄物収集運搬業許可についてご案内いたします。

建設業許可申請 その4

今回は、専任の技術者について、ご説明いたします。

前回からの繰り返しになりますが、許可を受けて建設業を営もうとする全ての営業所に、専任の技術者を置くことが必要です。建設業許可を取りたい社長さんが、経営業務の管理責任者になり、更に専任の技術者も兼任することは可能です。

そして、専任の技術者の要件は、次のようなものです。

まず、該当する建設業の種類に対応した資格を有していればそれが一番です。具体的な資格区分については、役所の手引きを参照してください。東京都の手引きはこちらです。P62~63とP70に「技術者の資格」として載っています。

資格を有していない場合は、10年以上の実務経験を有するという条件に合うか確認します。ただし、高校卒(指定学科あり)であれば実務経験は5年以上に、大学卒(指定学科あり)であれば実務経験は3年以上というように、要件は緩和されます。指定学科については、前述の東京都の手引きでは、P60~61に掲載されています。

次に、実務経験の証明についてですが、働いている(いた)会社に証明してもらう必要があります。その会社に実際に勤務していたことを証明する書類は、厚生年金被保険者記録照会回答票や住民税特別徴収税額通知書の写し、確定申告書等です。

また、その会社が建設工事をしていたことの証明について、建設業許可を持っている会社の場合は、建設儀業許可申請書及び変更届け出書の写しを使用することになります。建設業許可を持っていない会社の場合は、工事請負契約書、工事請書、注文書、請求書の写しなどを提示することになります。

但し、働いていたという実務経験の立証作業は、働いていた会社の協力が必要であり、かなり大変です。そのような場合の対応策としては、①ご自身がご自身の会社で更に実務経験を積み、要件を満たす、②外部から専任の技術者を連れてくる、などが考えられます。②については、身内の人間ではないということで、その人とトラブルが発生した場合のことを考えると、リスクが高くなると思います。

次回は、建設業許可を受けるためのその他の要件についてご案内いたします。

建設業許可申請 その3

今回は、建設業許可のための要件の一つである「経営業務の管理責任者が常勤でいること」をどのようにして証明していくかについて、ご説明いたします。

前回ご説明したように、経営業務の管理責任者の1つの要件に、「許可を受けようとする建設業(業種)に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者」がありました。

まずは、5年間経営業務の管理責任者だったという事の証明についてです。

例えば、会社の取締役であった場合は、登記簿謄本を取得して、取締役として登記されている(いた)ことを証明することができます。ただし、会社の目的として、許可を受けようとする建設業(業種)が登記されている(いた)必要があります。また、個人事業主であった場合は、登記簿謄本でなく確定申告書(5年分)を、証明するものとして使います。

そして、取締役として登記されていた企業が、本当に建設業を行っていたのかについても、証明する必要があります。ペーパーカンパニーではないことを証明するわけです。

基本的には、役員の期間であった5年分の資料を提示する必要があります。重いかもしれませんが、すべての資料を役所に持っていくつもりでいましょう。

①発注元からの注文書+自社からの工事請書 ⇒ 注文書は特に重要です。発注元企業の住所・名称・電話番号・印鑑を確認します。もしもなくしていたら、再発行してもらいましょう。

②請求書+請求した金額が入金されたことを証明できる銀行通帳 ⇒ 注文書がない場合は、このパターンです。ただし、請求書に建設工事の内容が記載されている必要があります。それがないときは、追加資料を求められることがあります。

③工事請負契約書(元請の場合) ⇒ 注文者と建設会社が相互に署名・捺印していますので、証明書類としては信頼性が高いです。1年間に4件、5年分で20件程度の書類が求められます。役所として、コンスタントに工事をしているか、事業の継続性を見たいはずです。できれば、複数の企業との契約書を用意するのがベターです。

次に、その経営業務の管理責任者が常勤していることの証明についてですが、住民票を使い、通勤圏内であることを裏付けます。通勤圏内とは、大体片道2時間以内です。その他としては、健康保険被保険者証です。これは会社に常勤している証明になります。

次回は、経営業務の管理責任者と同様に大切な「専任の技術者」がいることの証明についてご案内いたします。

建設業許可申請 その2

今回は、建設業の許可を受けるための要件についてご説明いたします。

許可を受けるためには、次の5つの要件を満たしていることが必要です。要件を一つでも満たしていないと、許可を受けることができません。

(1)経営業務の管理責任者が常勤でいること。

(2)専任技術者を営業所ごとに常勤で置いていること。

(3)請負契約に関して誠実性を有していること。

(4)請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること。

(5)欠格要件等に該当しないこと。

まず、(1)経営業務の管理責任者が常勤でいること、(2)専任技術者を営業所ごとに常勤で置いていること、の2つの要件を確認してみましょう。

(1)経営業務の管理責任者が常勤でいること ⇒ 法人の場合は常勤の役員のうち1人が、個人事業の場合は本人又は支配人のうち1人が、次の①から③のどれかに該当することが必要です。

①許可を受けようとする建設業に関し、過去5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有していること ⇒この場合の経験とは、営業取引の上で対外的に責任を有する地位にあって、建設業の経営業務について総合的に管理した経験のことを言います。要するに、建設業の経営者としての経験です。

②許可を受けようとする建設業以外の建設業(業種)に関し、6年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有していること 

③許可を受けようとする建設業に関し、6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって経営業務を補佐していた経験を有していること ⇒ 判断がつかない場合は、事前に役所に確認してみましょう。

(2)専任の技術者を営業所ごとに常勤で置いていること ⇒ 全ての営業所には、次のいずれかに該当する専任の技術者を置くことが必要です。

一般建設業許可の場合、次のいずれかの要件に該当するものであること

①高校(指定学科あり)卒業後、5年以上の実務経験を有する者

②大学(指定学科あり)卒業後、3年以上の実務経験を有する者

③10年以上の実務経験を有する者(学歴・資格を問わない)

「専任の技術者」とは、その営業所に常勤して専ら職務に従事することを要する者をいいます。従いまして、名義だけの者や通勤不可能と思われる者は認められません。

「専任の技術者」と「経営業務の管理責任者」の双方の基準を満たしている者は、同一営業所内において、両者を一人で兼ねることができます。

「実務経験」とは、建設工事(業種)に関する技術上の経験を言います。具体的には、建設工事の施行を指揮、監督した経験及び実際に建設工事の施工に携わった経験をいいます。なお、「実務経験」は請負人の立場における経験のみならず、建設工事の注文者側において設計に従事した経験あるいは現場監督技術者としての経験も含まれます。ただし、工事現場の単なる雑務や事務の仕事は実務経験に含まれません。

このように、経営業務の管理責任者と専任の技術者については、慎重に選定する必要がありますので、役所のホームページや申請の手引きで最新の情報を入手し、必要に応じて、事前に役所に相談することをお勧めいたします。

次回は、「経営業務の管理責任者が常勤でいること」について、どのようにして証明していくかについてご案内いたします。

建設業許可申請 その1

今回からしばらくは、中小規模の企業における建設業許可申請についてご説明いたします。

日本の建設業の企業数(会社数+個人事業所数)は、平成28年3月末の時点で47万社弱という状況です。その内の99.9%が中小企業です。中小企業の定義は、資本金が3億円以下または常時雇用する従業員が300人以下の企業です。

建設業許可といいましても、建設業者すべてが建設業許可を必要とするわけではなく、以下の場合は許可がなくても建設業者として工事をすることが可能です。

許可を受けなくてもできる工事(軽微な建設工事)
A 建 築 一 式 工 事 以 外 の 建 設 工 事 の場合
1件の請負代金が500万円(注)未満の工事(消費税込み)
 建築一式工事で下のいずれかに該当する もの
(1) 1件の請負代金が1,500万円(注)未満の工事(消費税込み)
(2) 請負代金の額にかかわらず、木造住宅で延べ面積が150㎡未満の工事
(主要構造部が木造で、延べ面積の1/2以上を居住の用に供するもの)
(注)①一つの工事を2以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額となります。
②注文者が材料を提供する場合は、市場価格又は市場価格及び運送費を当該請負契約の請負代金の額に加えたものが上記の請負代金の額となります。

しかし、建設業の許可が必要でない場合でも、法令等で、資格や役所への登録が必要なこともありますので、念のため役所に確認しておきましょう。

次に、建設業の許可には、国土交通大臣許可と知事許可の2種類があります。1つの都道府県にのみ営業所がある場合は、知事許可を取ることになります。中小企業の場合、知事許可を取得するケースが多いと思います。「営業所」とは、本店、支店、又は建設工事の請負契約を締結する事務所のことをいい、次の要件を備えていることとされています。

(1)来客を迎え入れ、建設工事の請負契約締結等の実体的な業務を行っていること。

(2)電話、机、各種事務台帳等を備えていること。

(3)契約の締結等ができるスペースを有し、かつ、居住部分、他の法人や個人事業主とは明確に区分されているなど独立性が保たれていること。

(4)自己所有の建物か、賃貸借契約を結んでいること。

(5)看板や標識等で、建設業の営業所であることが分かるようにしてあること。

(6)経営業務の管理責任者又は建設工事の請負契約締結等の権限を付与された者が常勤していること。

(7)専任技術者が常勤していること。

従いまして、単なる登記上の本店、事務連絡所、工事事務所、作業所等は、「営業所」に該当しません。

東京都で許可を受けた場合、営業活動や契約は東京都内の営業所でのみ行いますが、工事については他府県でも可能です。神奈川県の顧客から依頼された場合でも、東京都内の営業所で経営業務の管理責任者と専任技術者がチェックすれば、契約は可能です。

次に、建設工事と建設業の種類についてですが、全部で29種類あります。役所のホームページや手引きを読んでみてください。皆様がどの種類の許可が必要なのか、しっかりと確認してください。判断に困ったら、役所に相談しておきましょう。

次に、建設業の許可区分についてですが、一般建設業と特定建設業に区分されています。このうち特定建設業とは、①元請として契約を締結し、②工事の施工金額が4,000万円以上(建設一式は6,000万円以上)するケースです。4,000万円以上の工事を行う場合でも、下請としてであれば特定建設業の許可は不要です。

次回は、知事許可、一般建設業の許可を受けるための要件についてご案内いたします。