定款への記載事項について その2

今回も前回に引き続き、定款への記載事項のうち、いくつかをピックアップしてご説明いたします。

まずは、公告についてです。公告とは、特定の事項を広く一般に知らせることです。広告とは違います。株式会社は公告義務を負っていますので、会社に一定の変更が生じた場合、公告しなければいけません。

公告の方法については、定款の任意的記載事項ですから、必ずしも定款に定めなければいけないわけではありませんが、会社登記の際に必要な事項ですので、できれば定款に定めておくほうが良いです。

公告の方法には3つあります。

  • 官報に掲載する方法
  • 日刊新聞紙に掲載する方法
  • 電子公告

公告方法を定款に定めていない場合、「官報」での方法となりますので、日刊新聞紙又は電子公告にする場合は、そのことを定款に記載することになります。

次に発行可能株式総数についてです。これは、定款の絶対的記載事項です。しかし、発起設立の場合には、株式会社の成立の時(設立登記時)までに、発起人全員の同意による定款変更によって定めれば大丈夫です。

次に株式譲渡制限についてです。身内や仲間内だけで会社を経営していく場合、外部の第三者が株主になることを防ぐために、この事項を定款に定めておくことができます。相対的記載事項となります。

株式会社は、発行する全ての株式に関して、譲渡によって取得するにはこの株式会社の承認を要することとすることができます。譲渡承認機関は、原則として株主総会とされていますが、定款で別段の定めとすることも認められています。例えば、取締役会、代表取締役などです。

次に、機関についてです。株式会社は最低でも株主総会と取締役1名以上を置かなければいけませんが、定款に定めることにより、その他の機関を置くことができます。前々回にご紹介したような機関を、法律上許される範囲で定めることができます。

また、株主総会に関しては、招集方法、議長、決議方法、議決権の代理行使、議事録などについて記載することになります。これらは、相対的記載事項又は任意的記載事項ですので、必ず定款に記載しなければいけないわけではありません。

取締役については、員数、資格、選任方法、任期等を記載します。取締役の資格は、全ての株式に譲渡制限を設けている非公開会社においては、株主に限定することもできます。取締役の選任は、原則、株主総会の普通決議で行うものとされています。取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされていますが、定款に定めることにより短縮することも可能です。

尚、取締役会設置会社の場合は、取締役会を設置することを定款に記載します。

次回は、定款の記載事項について、残りの項目をご案内いたします。

定款への記載事項について

今回は、定款への記載事項のうち、いくつかをピックアップしてご説明いたします。

まずは商号についてです。商号は定款への絶対的記載事項の一つです。

商号とは会社の名前です。株式会社は商号を一つ定めなければならず、「株式会社」という文字を必ず用いなければいけません。事業を複数行う場合であっても、商号は一つだけです。

また、「同一商号・同一住所」の会社は、たとえ異なる目的であっても認められませんので、既に同じ会社名の会社が同じ住所で登記されていないかを、あらかじめ本店を管轄する法務局に確認しておくことが大切です。更に、商号の登記に用いることができる符号等の制限もありますので、注意が必要です。

尚、会社が海外での活動を計画している場合、定款の記載の中で、商号に続けて商号の訳文を書いておくこともできます。例えば、「当会社は、○○○株式会社と称し、英文では、○○○ Co.,Ltd.と表記する。」などと記載することも可能です。

次に目的についてです。

会社の目的とは、会社が行う事業のことです。株式会社は、定款に定めた目的(事業)についてのみ、業務活動をすることができます。定款に定めていなければ、その事業を営むことができないという事です。

目的は、定款の絶対的記載事項の一つであり、会社の登記事項でもあります。記載方法には一定のルールが定められていることもあります。例えば、許認可が必要な事業については、記載方法が指定されていることがあります。事前に許認可に関連する役所に確認しておきましょう。

定款に記載する際、一般的に、目的の最後の項目には、「前各号に附帯関連する一切の事業」と入れておきます。

次は、本店所在地についてです。

本店所在地も、定款への絶対的記載事項の一つです。定款に記載する本店所在地は、最小行政区画である市町村と特別区までで大丈夫です。同じ行政区画内での本店の移転の場合、定款を変更する必要がないというメリットがあります。

尚、支店の所在地は、定款への記載は必要とされていません。

次回も引き続き、定款への記載事項のうち、いくつかをピックアップしてご案内いたします。

定款の作成について

今回は、会社設立の手続き際の最初にすべき事、定款の作成についてご説明いたします。

まず、定款とは、会社(法人)の目的、組織、活動等についての規則を記載した書面のことです。会社の設立には、必ず定款を作成する必要があります。

定款は、発起人が作成して、株式会社の場合は公証人の認証を受けなければいけません。

定款の形式としては、A4の用紙に横書きで記載して、表紙、本文の順に書いていくのが一般的です。定款は、発起人全員が署名又は記名押印しなければいけません。普通、定款は3部作成して、1部が公証役場保存用、1部が会社保存用、もう1部を設立登記申請の時に法務局に提出します。

次に、定款への記載事項についてですが、これには、必ず記載しなければいけない絶対的記載事項と、定款に記載しなければ効力が発生しない相対的記載事項、定款に記載するかは当事者の任意である任意的記載事項があります。

絶対的記載事項は、次のようなものです。絶対的記載事項の一つでも欠けている定款は無効です。

  • 商号
  • 目的
  • 本店の所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
  • 発起人の氏名又は名称及び住所
  • 株式会社が発行することができる株式の総数(発行可能株式総数)

一方、相対的記載事項には、次のようなものがあります。定款に記載して初めて効力が発生する事項です。

  • 変態設立事項
  • 全部の株式の内容について、譲渡制限等を定める
  • 種類株式の発行
  • 単元株式
  • 株券発行
  • 株主総会、取締役会、監査役会招集通知機関の短縮
  • 株主総会の定足数、決議要件の法定要件と異なる定め

また、任意的記載事項には次のようなものがあります。

  • 株主名簿の基準日
  • 定時株主総会の招集時期
  • 株主総会の議長
  • 議決権の代理行使
  • 取締役、監査役、執行役の員数
  • 取締役会の招集県者

次に、定款の構成についてですが、一般に次のような章立てにしますが、原則は自由です。太字になっている項目は、絶対的記載事項ですので、必ず記載しなければいけません。

第1章 総則 ⇒ 商号、目的、本店所在地、公告方法など

第2章 株式 ⇒ 発行可能株式総数、株券発行の有無・種類、株式の譲渡制限、基準日など

第3章 株主総会 ⇒ 招集手続き、決議の方法など

第4章 取締役 ⇒ 員数、選任方法、任期など

第5章 計算 ⇒ 事業年度など

第6章 附則 ⇒ 発起人の氏名又は名称・住所、設立に際して出資される財産の価額又はその最低額など

次回は、定款への記載事項につき、もう少し詳しくご説明いたします。

株式会社の機関設計について

今回は、株式会社の機関設計についてご説明いたします。

機関設計とは、株主総会とか取締役会とかの機関を設計する(備えておく)ことです。会社法においては機関設計の選択の自由がかなり認められています。

まず、機関設計を決めていく際に、次の点を検討してみましょう。

公開会社にするか、非公開会社にするか

発行する株式全部について譲渡制限をつけている会社を非公開会社と呼び、それ以外の会社を公開会社と呼びます。譲渡制限とは、株式の譲渡について会社の承認を要する旨を定款に定めることです。家族経営などの小規模閉鎖的な株式会社において、株主が誰であるかが重要ですので、株主となる者の選別を可能とするために、非公開会社とすることができます。

取締役会を設置するか、設置しないか

株式会社は取締役を置く必要がありますが、取締役会の設置は任意です。

大会社にするか、大会社にしないか

大会社とは、資本金が5億円以上の会社、または負債額が200億円以上の会社のことです。

次に、機関設計におけるルールを抜粋してご案内いたします。

  • 必ず株主総会を置かなければいけません。
  • 取締役を1人以上置かなければいけません。
  • 公開会社は取締役会を置かなければいけません。
  • 取締役会設置会社は監査役を置かなければいけません。但し、非公開会社で会計参与を設置した場合は必要ありません。
  • 会計監査人設置会社は、監査役を置かなければいけません。
  • 大会社は会計監査人を置かなければいけません。
  • 会計参与は、全ての会社が任意で置くことができます。

非公開会社の場合、下記のような機関設計が可能です。

  • 株主総会+取締役
  • 株主総会+取締役+監査役
  • 株主総会+取締役+会計参与
  • 株主総会+取締役+監査役+会計参与
  • 株主総会+取締役+監査役+会計監査人
  • 株主総会+取締役+監査役+会計監査人+会計参与
  • 株主総会+取締役会+監査役
  • 株主総会+取締役会+監査役+会計参与
  • 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人
  • 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人+会計参与

繰り返しになりますが、機関設計を考える場合、上記①から③について検討することが大切となります。

次回は、定款の作成についてご案内いたします。

発起設立と募集設立について

今回は、株式会社設立の手続きについて、発起設立と募集設立に分けてご説明いたします。

まず、発起設立とは、株式の全部を発起人が引き受けて会社を設立する方法です。発起人とは、株式会社の設立を企画して設立手続きを進めていく人のことです。つまり、自分や仲間内だけで出資して、会社を作ることです。

一方、募集設立とは、株式の一部を発起人が引き受け、残りについては他から引受人となる者を募集して会社を設立する方法です。この方法でも、発起人は必ず1株以上引き受けなければいけません。つまり、自分と仲間内だけでなく、広く一般からの出資を募るもので、大きな資金で事業を行いたい場合はこの設立方法が向いているといえます。

発起設立と募集設立を比べた時のもう一つの違いは、募集設立の場合には、発起人及び設立時募集株式の引受人で行う創立総会というものが組織されることです。創立総会は、募集設立における設立の手続き中の、会社の最高意思決定機関となります。

次に、発起設立の場合における、株式会社設立手続きの流れは以下の通りです。

  • ①定款の作成
  • ②定款の認証
  • ③発起人全員の同意による設立時発行株式に関する事項の決定
  • ④変態設立事項(現物出資等)の検査役の調査
  • ⑤出資の履行
  • ⑥発起人全員の同意による発行可能株式総数の決定(原始定款に定めがない場合)
  • ⑦設立時取締役等の選任(原始定款に定めがない場合)
  • ⑧設立時取締役等による設立事項の調査
  • ⑨設立時代表取締役の選定(取締役会設置会社の場合)
  • ⑩本店所在場所の決定(原始定款に本店所在地を最小行政区画のみ定めた場合)
  • ⑪設立登記

募集設立の場合は、⑤出資の履行が行われた後に創立総会が開かれ、その中で設立時取締役等の選任が行われます。

次回は、株式会社の機関設計についてご案内いたします。

株式会社設立について

今回からしばらく、会社設立、特に株式会社の設立についてご説明して参ります。

まず、会社の種類についてですが、現在の法律(会社法)では、株式会社と持分会社を設立することができます。

持分会社は、合名会社、合資会社、そして合同会社に分かれます。これは、出資をした人(社員と呼びます)が会社の債権者に対して、どういう責任を負うのかによって決められています。出資した額に限らず無限に責任を負う(無限責任)のが合名会社、出資した額に限って責任を負う(有限責任)のが合同会社、無限責任と有限責任が混在しているのが合資会社となります。

一方株式会社は、出資した人(株主)が自分が出資した額までしか間接的に責任を負わない会社です。つまり、出資した額が責任の上限となります。

ここでは、今後、株式会社の設立についてご説明いたします。

大まかな流れとしては、①定款の作成、②公証役場で定款認証、③出資金の払い込み、④設立登記、となります。設立登記により、会社が設立したことになります。

そして、発起設立の場合と募集設立の場合とでは、すこし手続きが違ってきます。発起設立とは、自然人や法人などの発起人のみの出資により会社を設立することです。一方募集設立は、発起人のほか出資の引受人を募集して会社を設立することです。

次回は、発起設立と募集設立の手続きについて、ご案内いたします。

遺産分割協議書について

今回は、遺産分割協議書についてご説明いたします。

親族・身寄りのいないAさんは、そもそも遺産を相続してくれる相続人がいないので、遺産分割協議書を作成する人も、作成する必要もありません。

一方、ご本人が遺言書を残さずに突然亡くなってしまった場合や、遺言書はあるけれどもその内容とは異なる遺産分割を行いたい場合などに、遺産分割協議書は作成されます。

遺産分割協議書は、ご本人が亡くなったことにより、その遺産(財産)を承継する相続人である家族・親族など、全員で協議された結果を書き残す文書です。全員でなされなければ無効となります。

遺言書の内容と違った遺産分割を行う協議も可能ですが、相続人全員が同意することが必要です。

遺産分割の対象となるものは、ご本人の現金預貯金・不動産・有価証券などの「積極財産」のみとなり、借金などの「消極財産」は遺産分割の対象となりません。消極財産は、ご本人が亡くなったと同時に法定相続分に応じて当然に承継されるものだからです。

遺産分割協議書には、相続する財産をすべて記載して、誰が取得するのかを明記しておくことが原則です。しかし、分割協議書作成後に財産が見つかることもありえます。そのような場合に備えて、あらかじめ遺産分割協議書に、どのようにするのかを記載しておくと良いでしょう。例えば、改めて分割協議を行うことにするとか、特定の相続人が取得することにしておくとかです。

遺産分割協議書は、不動産の相続登記時や金融機関での相続財産の引き出し時に必要なため、行政機関や金融機関等が認める形式・正確な内容である必要があるため、行政書士に作成を依頼するのが無難です。或いは、不動産を相続する場合は、登記の専門家である司法書士に依頼することになります。

次回からは、会社の設立についてご案内いたします。

遺言書作成について

今回は遺言書作成について、ご説明いたします。

前回までのおさらいとなりますが、親族・身寄りのいないAさんは、行政書士等との間で生前に、財産管理等委任契約・任意後見契約、そして死後事務委任契約を結んでいました。そして、ご自身が亡くなった後の残余財産について、お世話になった方々にあげたり、地元に寄付したりしたいと考えています。この場合、遺言を作成しておくというお話でした。

まず、遺言とは遺言者がする相手方のない単独の意思表示ですので、誰かの了解を得たり内容を知らせる必要はありません。そして、Aさんが15歳に達していればすることができます。受け取る側(受遺者)になれるのは、自然人と法人です。従って、お世話になったご近所の方など、法定相続人以外や外国人でも構いません。遺言によって法的効力を得るのは、財産の処分や身分に関する事項などですので、「葬式は質素に行って欲しい」などの感情は、遺言書に書いたとしても、法的な効果は発生しません。また、遺言は法律の定める方式に従わなければ、法的な効力が生じません。

そして遺言の方式の種類ですが、普通方式と特別方式があります。通常は普通方式により遺言を作成します。その中でも多く利用されているのが、自筆証書遺言と公正証書遺言です。自筆証書遺言にも公正証書遺言にも、メリットとデメリットがあります。

自筆証書遺言のポイントとしては、次のようなものです。

①費用が掛からない。

②全文を自署します。パソコン等での作成は不可となります。

③日付や氏名を自筆で書きます。日付が不明確だと無効となります。

④押印します。認印でも構いません。

⑤封印は任意となります。封印されている場合は、家庭裁判所で開封しますので、その前に勝手に開封はできません。

⑥家庭裁判所での「検認手続き」が必要です。この時、法定相続人全員が家庭裁判所に呼ばれます。検認手続きが完了するまで、通常1か月以上かかります。

一方、公正証書遺言のポイントは下記のようなものです。

①費用が掛かる。

②公証役場で作成します。

③証人が2人必要です。

④「検認手続き」は不要となります。従って、すぐに相続手続きに移ることができます。

尚、どのような場合に遺言書を作成しておいたほうが良いのでしょうか。

まずはAさんのように親族・身内がいないケースです。残った財産を誰にどのような財産をあげるかを書き残すことができます。次に、親族・身内はいるが法定相続人以外の人にあげたいケースです。例えば、息子の奥さんが良く面倒を見てくれたから財産を渡したいなどです。逆に親不孝な息子には法定相続分通りにあげたくないと思うケースもあります。或いは、前妻との間に子がいたり、外に認知した子がいて、それを家族が知らないケースなどもあります。

次回は、遺産分割協議書についてご案内いたします。

死後事務委任契約について

今回は第三ステージ、つまりAさんが亡くなった時のための死後事務委任契約についてご説明いたします。

まず、死後事務委任契約とは何かというと、身寄りのいないAさん(委任者)が行政書士等の受任者に対して、Aさんが亡くなった後の葬儀や埋葬等に関する仕事を委託するものです。

普通、委任契約というものは、原則として、委任者又は受任者の死亡によって終了してしまいます。また、双方とも、いつでも委任契約を解除(キャンセル)することができます。

しかしこの死後事務委任契約は、Aさんの死亡によっても、委任契約を終了させない旨の合意をした契約となります。つまり、死亡によっても契約は終了しないという意味です。

そして、死後事務委任契約の内容には、短期の死後事務と、3回忌や7回忌法要などを委託する長期の死後事務がありますが、一般的には短期の死後事務を委任することとなります。

短期の死後事務の例としては、次のようなものがあります。

・水道光熱費の支払いや役所への諸届出

・葬儀や埋葬などに係った費用の支払い(通夜・告別式の場所やお寺の指定、埋葬・納骨場所の指定もできます)

・家賃・治療費・入院費などの支払い

・家財道具や生活用品の処分

この死後事務委任契約は、法律上は必ずしも公正証書によって契約書を作成する必要はないのですが、Aさんが亡くなった後に、行政書士等に確実に委任された業務を行わせるためにも、行政書士等と共に公証役場に行き、公正証書の形で作成することが望ましいです。

ところで、死後事務を終了させた後に残った財産(残余財産)をどうするのかについて、死後事務委任契約書に書いておくことになります。

身寄りのないAさんは、お世話になったご近所の方々へ残余財産をあげたいと考えていたとしますと、あらかじめ遺言書を書いて残しておくことになります。

次回は、この遺言書作成についてご案内いたします。

任意後見契約について

今回は、前回の「財産管理等委任契約」に続きまして、「任意後見契約」についてご説明いたします。3つのステージのうち、第二ステージについてです。つまり、認知症発症からお亡くなりになるまでの間です。

まず、成年後見制度は法定後見制度と任意後見制度に分けられます。

法定後見制度は、Aさんが実際に判断能力が低下してから、Aさん本人や家族等の申し立てによって、家庭裁判所がAさんの保護者を選定する制度です。法律の規定による後見制度です。手続きは、弁護士や司法書士が行います。

一方、任意後見制度は契約による後見制度です。つまり、Aさん本人がまだ元気で判断能力がある間に、将来Aさんの判断能力が低下した場合に備えて、Aさんの代理人(任意後見人)となる人を選び、その代理人にどのような権限を与えるかを契約によってあらかじめ決めておき、実際にAさんが判断能力が不十分になったときに、代理人に後見事務を行ってもらうものです。このことを任意後見契約と呼びます。

そして任意後見契約は、Aさんが受任者である行政書士等に対して、認知症が発症した場合、Aさんの生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託して、その委託に関する事務について代理権を付与するものです。この契約は、契約を締結したらすぐに効力が発生するものではなく、家庭裁判所により任意後見監督人が選定された時から効力が発生します。

また、任意後見契約書は、公正証書によって作成しなければいけませんので、Aさんのご自宅の周辺にある公証役場に、受任者である行政書士と共に出向く必要があります。

この任意後見契約書があれば、Aさんが認知症を発症してしまっても、契約に従い行政書士等の受任者が、家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらい、代理業務の報告もこの任意後見監督人にすることになり安心です。大抵の場合、任意後見監督人は弁護士や司法書士が選任されます。

前回から今回までの流れをもう一度おさらいしますと、Aさんが元気で認知症でもない時に、将来認知症になってしまう時までを網羅する「財産管理等委任契約」を結んでおき、認知症が発症した時のために「任意後見契約」を締結しておくことで、安心して将来に備えることができます。

次回は、第三ステージである死後事務委任契約についてご案内いたします。