外国人インターンシップについて

私が勤務している会社で受け入れていたマレーシアからのインターンシップ生が先日11月19日に帰国しました。経済産業省が推進している国際化促進インターンシップ事業で、約2か月半の間、マレーシア人の大学生1名(Sさん)を受け入れていました。Sさんは母国語である英語のほか、マレー語、中国語(北京語・広東語)それに日本語ができましたので、受入れた部門でもその言語能力を十分に活用してもらいました。

帰国前日の18日には、この事業に参加したインターンシップ生約40名とその受入れ企業が東京に集まり、「成果発表会」が開催されました。インターン生の国籍は、ベトナム、インドネシア、マレーシアからが多く、その他インドやエジプト、カザフスタン、カンボジアなどもいらっしゃいました。彼らは約50倍の競争から選ばれてきた大学生たちで、将来日本で働きたいと希望する方も少なからずいるようでした。彼らは約2か月半、日本の各地で受入れ企業で活動し、その地域で生活し、そこの社員たちと交流して過ごしました。「成果発表会」のどの企業の発表でも、インターン生の活躍と日本人との交流が取り上げられていました。受入れ企業はインターン生の国のよき理解者となるでしょうし、一方インターン生も、日本と母国をつなぐ橋渡し役として活躍していくと思います。

このような活動は、日本と外国の相互理解とお互いの国の繁栄に寄与するでしょうし、もっと活発に行われても良いと思います。

幸い日本には外国人の在留資格の一つに「特定活動ーインターンシップ」があります。この在留資格では、最長1年間インターン生を受け入れることができます。受入れ企業としては、この在留資格をもっと活用してみてはいかがでしょうか。

かいけつサポートについて

今回も、ADR(裁判外紛争解決手続)についてです。

まず、法務大臣から「かいけつサポート」の認証を受けた民間ADR事業者がおこなうADRと裁判との違いについてです。

紛争の解決方法といえば「裁判」が代表的ですので、裁判と「かいけつサポート」にどのような違いがあるのか、両者を比較してみます。

裁判と「かいけつサポート」の主な特徴
裁判かいけつサポート
主体裁判官各分野の専門家
秘密の保護公開非公開
手続の進行民事訴訟法に従った手続進行ニーズに応じた柔軟な手続進行が可能
費用裁判所の訴訟費用認証を受けたADR事業者に支払う費用
強制執行力ありなし

また、「かいけつサポート」を利用することには、主に次のようなメリット・デメリットがあります。

【メリット】
  1. 各分野の民間の専門家が手続を進めます
    かいけつサポートは、取り扱う紛争の分野に精通した民間の専門家の知識・ノウハウを活用します。これにより、紛争の実情を踏まえた、きめ細やかで迅速な解決を図ることが期待できます。
  2. 手続が簡便・迅速です
    法務省によると、かいけつサポート全体の取扱実績として、8割以上の事件が6か月以内に終了し、7割以上の事件が3回以内の審理で終了しています。この実績から、手続に時間や回数をかけずに、簡易・迅速に進められていることがうかがえます。
  3. 利用前に手続の進行や費用の目安を知ることができます
    かいけつサポートの事業者は、手続の開始から終了に至るまでの標準的な手続の進行や、当事者が支払う報酬・費用などの重要なポイントについて、事前に当事者に説明することが義務とされています。この説明を受けることにより、本当に自分にとってふさわしい解決方法なのかを、事前によく考えた上で利用することができます。
  4. 時効の中断等の法的特例が認められる場合があります
    第三者を交えてじっくり話し合いをしていると、その間に時効が成立してしまうことが考えられます。かいけつサポートを利用すれば、ADR法が定める一定の場合には、時効の中断が認められます。このほかにも、訴訟手続の中止や調停前置の特則といった法的特例が用意されています。
【デメリット】
  1. 相手方が話し合いに応じなければ手続を開始できません
    かいけつサポートは、当事者間の紛争を調停人・あっせん人が仲介しながら話し合いを進め、和解の合意を目指そうという手続ですから、相手方が話し合いに応じないといった場合には、そもそも手続を開始することができません。
  2. 途中で一方が手続から離脱すると、その時点で手続が終了します
    相手方が話し合いに応じて手続が開始されたとしても、一致点が見いだせない場合や、調停人の提示する和解案を当事者のどちらか一方でも受け入れなかった場合には、未解決のまま手続が終了することになります。
  3. 合意内容を強制的に実現させることができません
    かいけつサポートによる話し合いの結果で合意した内容は、一般的に和解合意書の形式でまとめられますが、強制執行力はありません。ただし、お互いの話し合いの結果で合意したものなので、合意内容が実施されないという例は実際にはあまりないようです。

次に、「かいけつサポート」を利用するためにはどうすればよいかについてです。

法務省では、「かいけつサポート」のウェブサイトを通じて様々な情報を提供しています。「かいけつサポート」の認証を受けた民間ADR事業者の情報を事業者名の一覧から探せるほか、「事務所の所在地」や「取り扱う紛争の分野・範囲」からも探すことができます。

「かいけつサポート」認証を受けている民間ADR事業者の名称や連絡先はこちらです。

なお、手続をスムーズに進めるために、「かいけつサポート」を利用する前には、次のようなことを整理しておくとよいでしょう。

(1)相手方の連絡先を確認しておく
あなたの依頼により「かいけつサポート」のサービスが始まると、依頼を受けた民間ADR事業者から相手方に郵便などで連絡や通知をすることになります。相手方の確実な連絡先などを事前に把握していると、手続がスムーズに進みます。

(2)自分の言い分を整理しておく
例えば、トラブルについて、その内容とともに、起きた日時や場所、原因などについて、あなたがどのように考えているか、といったことを事前に整理しておくと、話し合いたいポイントがはっきりします。トラブルに関連する資料などがある場合は、事前に整理して準備しておくとよいでしょう。

(3)自分がどのような解決を望むか想定しておく
話し合いを重ねても、あなたの言い分がすべて通るとは限りません。トラブルのどの点についてどこまで合意できれば相手方と和解してもよいか、いわゆる”落としどころ”を事前に想定しておくことが大事です。

※出所:政府広報オンライン

ADR(裁判外紛争解決手続)について

近所のペットの鳴き声で困っているとか、自転車と自転車が衝突してしまったとか、身近なトラブルを解決したいが、裁判にはしたくないという場合に、ADR(裁判外紛争解決手続)の利用も一つの方法です。

ADR(裁判外紛争解決手続)とは、民事上のトラブルについて、裁判によらずに、当事者と利害関係のない公正中立な第三者が当事者間に入り、当事者双方の言い分をよく聴きながら専門家としての知見を活かして、当事者同士の話し合いを支援し、合意による紛争解決を図る手続きです。

ADRの手続の一般的な流れは、次のようになります。

  • ADRを利用したい人(申込人)がADR事業者に申込みを行う。 ※申込みの内容が、話し合いによる解決の手続を行うのに適さない場合などは、受理されないこともある。
  • ADR事業者は、申込みを受理すると、ADR手続の開始について、相手方に連絡する。
  • 相手方がADR手続の開始に合意すると、ADR事業者により選任された手続実施者(調停人と呼ばれる人)が間に入って、申込人と相手方が話し合いを行う。 ※相手方がADR手続の開始に応じないと、ADR手続は行われない。
  • 申込人と相手方双方が合意すれば、ADR手続は終了する。 ※合意が成立しない場合、ADR手続は不成立となる。

一般的にADRには、「民事調停」や「家事調停」、「裁判上の和解」など裁判所が行うもの(司法型ADR)、公害等調整委員会や国民生活センターの紛争解決委員会などの行政機関・行政関連機関が行うもの(行政型ADR)のほかに、民間のADR事業者が行うもの(民間型ADR)があります。

民間ADR事業者には、地域の弁護士会や行政書士会といった士業団体のほか、家電製品や自動車、ソフトウェアなどの業界団体や消費者団体、NPO法人などがあり、各分野の専門的知見を利用できることが特徴です。

法務省は、民間事業者によるADRを安心して利用してもらうために、民間ADR事業者の申請に基づき、ADR法(裁判外紛争解決の利用の促進に関する法律)で定められた基準をクリアしているかどうかを審査し、その基準をクリアしている事業者を法務大臣が認証する制度(法務大臣による裁判外紛争手続の認証制度)を取り扱っています。認証のための主な基準は、次のとおりです。

認証基準(主なもの)

(1) トラブルの内容に応じた専門家を紛争解決の手続を進める人(調停人)として選任できるよう、専門的人材を確保していること。

(2) 当事者と利害関係のある人が調停人とならないような仕組みが備わっていること。

(3) 調停人が弁護士でない場合は、法的な問題に対応するため、弁護士の助言を受けることができるようにしておくこと。

(4) 紛争解決の手続について、標準的な手続の進行、資料の保管や返還の方法、費用の算定方法、苦情の取扱い等を定めていること。

(5) 当事者のプライバシーや秘密などを守るための体制が整っていること。

ADR法に定められた基準をクリアし、法務大臣の認証を受けた民間ADR事業者は、「かいけつサポート」の愛称とロゴマークを使用することが認められています。民間ADR事業者を選ぶ際は、「かいけつサポート」のロゴマークの有無を参考にするとよいでしょう。

解決サポートロゴマーク

現在、「かいけつサポート」の認証を受けた民間ADR事業者は、全国各地に160以上あります。

各事業者によって取り扱う紛争の分野・範囲は異なりますが、私が所属する東京都行政書士会(行政書士ADRセンター東京)としては、次の分野・範囲の紛争を取り扱っています。

  • 外国人の職場環境・教育環境に関するトラブル
  • 自転車事故に関するトラブル
  • ペットに関するトラブル
  • 賃貸住宅の敷金返還・原状回復に関するトラブル

送出し機関との不適切な関係についての注意喚起

外国人技能実習機構は、2019年10月31日付で、監理団体代表者を対象にして、「送出し機関との不適正な関係について(再度の注意喚起)」を、ホームページに掲載しております。

この内容を要約しますと次のようになります。

①法務省と厚生労働省は今年の10月8日付で、送出し機関との間で不適正な契約を締結していた監理団体について、技能実習法に基づき監理団体の許可を取り消したこと、

②理由は、監理団体が送出し機関との間で、「技能実習に係る契約の不履行について違約金を定める内容の覚書を交わしていたこと」と、「覚書の中で、技能実習法の規定に照らして不適正な内容の取決めを交わしていたこと」、

③送出し機関との不適切な関係については平成29年12月14日付で各監理団体に対して注意喚起を行ったところだが、今回のように、外国人技能実習機構に提出している契約とは別に送出し機関と覚書を交わし、技能実習生が失踪等した場合に送出し機関から違約金を受け取ることや、送出し機関から監理費以外の手数料又は報酬を受け取ることを約することは許されないことを再度注意喚起する、とされています。