法定後見制度と任意後見制度について

今回は、成年後見制度における法定後見と任意後見について、簡単にご説明いたします。

まず、成年後見制度とは何かについてですが、認知症のお年寄りや知的障害・精神障害のある方が、現在の能力や財産を活かしながら、終生その方らしい生活を送ることができるように、法律面や生活面から保護し支援する制度のことです。

そしてこの成年後見制度は、法定後見制度任意後見制度の2つに分けられます。

例えば認知症のお年寄りについていえば、既に判断能力が低下してしまっており今すぐ支援を受けたい場合は法定後見制度を利用することになります。一方現在は認知症ではないが将来の判断能力の低下に備えたいという場合は任意後見制度を利用することができます。このタイミングが法定後見制度と任意後見制度の決定的な違いです。

法定後見制度は、その名のとおり法律に定められた後見制度ということですが、この法律は「民法」のことです。判断能力が低下した時に、家庭裁判所に後見人等を選任してもらい、その人に支援してもらいます。申立時(家庭裁判所に相談に行ったとき)の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の3つの類型があり、支援する人をそれぞれ後見人・保佐人・補助人と呼びます。

一方任意後見制度は、「任意(契約)」といっても根拠となる法律があり、それは「任意後見契約に関する法律」です。判断能力があるうちに、将来支援してもらう人との間で支援の内容を公正証書で契約しておき、判断能力が衰えた時に任意後見監督人という人の選任申立を行うことによって、速やかに支援してもらうことができます。

行政書士としての今年の出来事

2019年もあとわずかです。私の行政書士としての今年の出来事を振り返りました。

ブログ開始  今年の1月12日にブログを開始しました。毎週日曜日・水曜日・土曜日に投稿する計画でしたが、年の後半からそのペースが維持できなくなりました。

事務所の看板取付け  東京都小金井市にある賃貸マンションの一室を事務所にしているのですが、3月にマンション入り口に看板を取り付けました。

特定技能の登録支援機関に登録されました  4月1日に東京入管に申請し、5月28日付で登録されました。

CIA(公認内部監査人)の資格を取得しました。  

公益社団法人 成年後見支援センターヒルフェの正会員になりました。後見人になるための60時間の基礎研修を受け知見を深めました。  

行政書士ADRセンター東京の調停人候補者養成講座を受講しました。 来年1月の最終面接試験を経て、外国人の職場環境・教育環境に関するトラブルの調停人候補者になります。

講座の講師を拝命しました  東京都西多摩地域を観光で活性化させる東京マウンテンさん主催のゲストハウス創業講座で、旅館業法や許認可申請手続きについて80分お話しさせて頂きました。

行政書士登録2年目の今年、少しずつ前に進めたかなと思います。

特定活動インターンシップ 在留資格申請時の書類

日本の企業が外国の大学生をインターンシップとして受け入れる場合、特定活動・インターンシップという在留資格を申請することになります。(以下、報酬を出すケースを前提としてご説明いたします)

法務省のホームページには申請時の提出書類について書かれています。しかし、全ての書類を揃えて入国管理局に提出したとしても、後日以下のような追加資料の提出依頼が来る可能性があります。

  • 外国人従業員の従業員リスト (氏名、国籍、在留資格、在留カード番号、現在従事している業務について記載したもの) 但し、外国人従業員がいない場合は要請されないはずです。
  • 通訳人の使用の有無について  使用するのであれば、氏名、国籍、外国人であれば在留資格、在留カード番号も記載します。
  • 指導方法の詳細について説明した文書  「方法」ですので、誰がどのような指導を行うのかについて記載します。レクチャーなのか、現場で実地指導なのかも含めて記載します。
  • 指導員の有無について  指導員がいる場合は、指導員の氏名、国籍、従事している業務は必ず記載します。
  • 勤務に係るシフト表について  インターンシップ開始から3ヶ月分ほどのインターン生のシフト表です。
  • 語学能力のわかるもの   日本語を使用して活動させる場合、日本語能力試験等を受験しているのであれば、合格証明書の写しを提出します。合格証明書がない場合は、大学で日本語を選択しているのであればそのその科目の成績証明書でも構いません。
  • インターンシップの評価方法を説明した文書   受入企業がインターン生の活動をどのように評価するのかを記載したものですが、評価表があるならばその写しも提出します。
  • 実務研修で使用する言語について説明した文書 

尚、作成した文書には、作成年月日及び作成者の署名を記載します。

従いまして、申請時の提出書類にはじめから添付しておくか、追加提出依頼が来た時のために、あらかじめ用意しておくことをお勧めします。尚、追加資料の提出期限は2週間ほどです。提出期限までに提出しない場合については、やむを得ず提出期限を超過する場合は提出期限日までに入国管理局に連絡する必要があったり、期限内に提出できない理由書の提出を求められたり、既に提出された資料のみによって許可か不許可を決定されたりしますので、十分注意が必要です。

ホテル・旅館業に関する様々な許認可について

今回は、ホテル・旅館業を始める際に必要な許認可についてご説明いたします。

ホテルや旅館、ゲストハウス等を始めようとする場合、旅館業法に基づく許可だけを取っておけばよいというわけではありません。その他にも様々な許認可が必要になることがありますので、どのようなものがあるのか知っておく必要があります。

まずは旅館業法に基づいて都道府県知事等の許可が必要となります。ホテルや旅館とゲストハウスの違いは、ゲストハウスは宿泊する場所を多人数で共用する構造と設備を設けている点です。ホテルや旅館のように一部屋を一つのお客様(団体でも)に独占して使用させるわけではありません。

ここで注意すべきは、住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)のことです。民泊新法の場合は、営業日数が1年間で180日をこえないこととされており、許認可を取得するのでなく、都道府県知事への届出が必要となります。180日を超えて人を宿泊させる可能性があるのであれば、旅館業法に基づく許可を取得すべきだといえます。

次に、宿泊事業に付随するサービスに関しても考慮しておく必要があります。

道路運送法  他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業は事業種別ごとに許可が必要とされています。但し、宿泊者だけを対象とした宿泊サービス提供のための無償かつ最寄駅等(特急停車駅や空港等の主要な交通結節店等)への輸送であれば許可は不要ですので、自動車での輸送サービスを考えている場合、許可を取得するのかしないのか判断する必要があります。

食品衛生法  宿泊施設で飲食サービスを提供するのであれば許可を取得する必要があります。旅館業許可と同様に都道府県知事の許可となります。

温泉法   宿泊施設の浴場が温泉である場合には、温泉法に基づき利用等の許可が必要となります。これも都道府県知事の許可となります。

公衆浴場法  温湯、潮湯又は温泉その他を使用して、公衆を入浴させる施設に関しては都道府県知事の許可が必要となりますが、旅館業法の宿泊施設内の浴場施設については適用が無いものとされています。但し、宿泊施設外に施設を設けるのであれば許可が必要です。

風営法  もし宿泊施設内にライブハウスやクラブ、スポーツバー等を設置する場合、深夜に酒類を提供するバーを設置する場合には許可の取得や届出が必要になる可能性があります。

クリーニング業法  宿泊施設がクリーニングサービスを提供する場合、業務委託関係や設備の所在、収集方法等により、クリーニング業に関する届出が必要になる可能性があります。

酒税法  一般的に酒類を提供する場合には酒税法上の種類販売業許可が必要となりますが、飲食店における飲用目的での提供であれば酒類提供免許は不要となります。

資金決済法  商品券や食事券等を発行している場合、前払式支払い手段の発行者に該当する場合があります。もしも商品券等の発行残高が1,000万円を超える場合、財務局への届出及び基準日における未使用残高の合計額の2分の1の金額について供託が必要となる可能性があるので、注意してください。

また、宿泊施設としての不動産に関係する許認可にも注意が必要です。

都市計画法  用途地域等都市計画に従う必要があります。ホテルや旅館、ゲストハウスは、住宅専用地域に開業することはできません。

建築基準法  宿泊事業を始めるに当たり建築確認を受ける必要があります。民家を改築してゲストハウスにした場合なども、宿泊施設としての建築確認を受けることになります。

・消防法  防火の観点から消防設備等を設置する義務が生じます。宿泊施設の営業を始める前に、消防署に相談に行くことが求められます。

・海岸法・港湾法  宿泊施設が海岸に面していて、砂浜の利用や工作物等の設置をする際は、海岸管理者の許可が必要となります。

・自然公園法  宿泊施設を自然公園(国立公園、国定公園、都道府県立自然公園)に設けようとする場合、地区指定の種類に応じて開発行為が制限されることになります。

以上のように、ホテルや旅館、ゲストハウスを開業しようとする場合、実に様々な許認可が関わってくる可能性があります。周辺地域の理解と協力を得ながら、宿泊客に安全に滞在してもらうために必要なことであると考えれば、前向きに捉えることができると思います。

旅館業法と住宅宿泊事業法(民泊新法)の制度比較

今回は旅館業法(簡易宿所の場合)と住宅宿泊事業法(民泊新法)の制度について比較してみます。例えば、ゲストハウスを創業する場合、旅館業法(簡易宿所)の許可を取るのか、それとも民泊新法に沿って届出をするのかを、経営者はまず判断することになります。

  • 制度比較
  旅館業法(簡易宿所の場合) 住宅宿泊事業法(民泊新法)
所管省庁   厚生労働省 国土交通省、厚生労働省、観光庁
許認可等   許可 届出
住専地域での営業 不可 可能(条例により制限されている場合あり)
営業日数の制限 制限なし 年間提供日数180日以内(条例で実施期間の制限が可能)
宿泊者名簿の作成・保存義務 あり あり
玄関帳場の設置義務(構造基準) なし なし
最低床面積の確保 最低床面積あり(33㎡。但し、宿泊者数10人未満の場合は、3.3㎡/人 最低床面積あり(3.3㎡/人)
衛生措置 換気、採光、照明、防湿、清潔等の措置 換気、除湿、清潔等の措置、定期的な清掃等
非常用照明等の安全確保の措置義務 あり あり 家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要
消防用設備等の設置 あり あり 家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要
近隣住民とのトラブル防止措置 不要 必要(宿泊者への説明義務、苦情対応の義務)
不在時の管理業者への委託業務 規定なし 規定あり
(申請)手数料 16,500円(簡易宿所営業) なし

・ゲストハウスを創業することを前提としますと、旅館業法(簡易宿所)の場合「許可」が必要となります。一方民泊新法ですと必要書類を揃えた後「届出」で済みます。

・用途地域のことも考慮する必要があります。旅館業法(簡易宿所)だと住宅専用地域では開業ができませんが、民泊新法だと可能です。(但し、地域の条例により制限されている場合あり)

・営業日数については、旅館業法(簡易宿所)だと制限なしですが、民泊新法だと180日いないという制限がかかります。これは大きな違いです。

・玄関帳場(フロント)の設置義務については、旅館業法(簡易宿所)と民泊新法ともに、不要となります。

・最低床面積の確保について、旅館業法(簡易宿所)の場合33㎡ですが、宿泊者数が10人未満の場合は、民泊新法と同様に一人につき3.3㎡となります。

・手数料については、旅館業法(簡易宿所)の場合のみ16,500円かかります。

上記のような制度の違いも踏まえ、経営者はどちらの制度を選ぶのか決めることになります。