NPO法人の定款の作成について

今回は、NPO法人の設立認証申請に必要な書類のうち、定款の作成について若干ご説明いたします。

特定非営利活動促進法(NPO法)では、定款に定める項目を規定しています。こちらです。このうち、いくつかの項目について注意点を書いておきます。

まず、「名称」については、他の法律で使用を禁止されているものや、誤認させるような文字の使用はできません。地方公共団体の名称と混乱する名前は避けたほうが良いです。もじについては、ローマ字も使用できます。

「事務所の所在地」については、例えば「東京都渋谷区」とか「神奈川県横浜市」のように、独立の最小行政区画まで記載して、地番を記載しないことも可能です。同じ地域内で移転する際に、定款の変更が不要となります。

「目的」には、①主な事業、②事業活動が社会にもたらす効果、経済目的、③受益対象者の範囲、の3点を具体的に記載することが必要です。また、「特定非営利活動の種類」には、指定された20分野のうちから選択した活動を記載しますが、「目的」と関連していることが求められます。

「その他の事業」については、任意ですので、その他の事業をするのであれば書いておきます。

NPO法人の設立について4回にわたりご説明してきましたが、今回でいったん区切りとさせていただきます。

次回からは、新たな外国人材の受け入れ制度について、ご説明いたします。

NPO法人の設立要件について

今回は、NPO法人の設立要件について、ご説明いたします。

  1. まず最初は、特定非営利活動を行うことを、主たる目的とすることです。特定非営利活動は特定20分野のいずれかに当てはまることとなります。特定20分野はこちらです。
  2. 営利を目的としないことです。法人の構成員に対して、利益を分配したり財産を還元したりしないという意味です。利益を得てはいけないということではありません。
  3. 社員の資格に関して、不当な条件を付けないことです。原則として、社員には誰でもなれるということです。
  4. 役員報酬を受けられる者は、役員総数の3分の1以下であることです。
  5. 宗教活動や政治活動を主たる目的としないことです。
  6. 特定の公職の候補者、公職者又は政党の推進・支持・反対を目的としないことです。特定の公職とは、衆参議員、地方公共団体の議会に議員及び首長のことで、選挙活動にNPOを利用できません。
  7. 暴力団でないことです。また、暴力団の構成員でなくなった日から5年を経過していない者がNPO法人を組織することはできません。
  8. 10人以上の社員を有することです。

所轄庁は、申請が上記要件(基準)に適合すると認めるときには、設立を認証しなければいけないこととされています。

次回は、NPO法人の設立認証申請に必要な書類である定款の作成についてご案内いたします。

NPO法人の設立手続きについて

今回は、NPO法人の設立手続きについてご説明いたします。

まず、大まかな流れについては次のようなものです。

  1. 申請者は、認証申請書類を、所轄庁に提出します。
  2. 所轄庁は、公告(広告ではありません)又はインターネットの利用(NPOホームページ)により1か月間公表します。市民は、定款、役員名簿、設立趣意書、事業計画書、活動予算書を、自由に見ることができます。
  3. 所轄庁は、認証又は不認証の決定をして、申請者に通知します。書類を受理してから、3ヶ月以内です。
  4. 申請者は、認証の通知を受けたら、2週間以内に、主たる事務所の所在地にて、設立登記をして、法人を設立し、所轄庁へ届出します。2週間以内に、従たる事務所の所在地での登記もします。
  5. 所轄庁は、社員(NPO法人のメンバー)及び利害関係者への閲覧をします。閲覧書類は、定款、役員名簿、事業計画書、活動予算書、設立の時の財産目録、認証に関する書類の写し、登記に関する書類の写しです。

次に、設立認証申請に必要な書類は次の通りです。

  • 設立認証申請書
  • 定款
  • 役員名簿
  • 就任承諾及び誓約書の謄本
  • 役員の住所又は居所を証する書面
  • 役員のうち10人以上の者の名簿
  • 確認書
  • 設立趣意書
  • 設立についての意思の決定を証する議事録の謄本
  • 設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書
  • 設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書

次回は、NPO法人の設立要件についてご案内いたします。

NPO法人について

今回から数回にわたり、NPO法人の設立についてご説明いたします。

皆様の中には、福祉・環境・教育・文化・まちづくり・国際協力等の様々な分野でボランティア活動を通して、社会貢献をしたい(している)という方々もいると思います。そのような方々にとって、その活動の母体となる法人を作るという場合、選択肢の一つにNPO法人があります。

まず、NPOとは、Non Profit Organizationの略語で、日本語に直訳すると非営利組織となります。非営利といっても、利益を上げてはいけないという意味ではなく、利益が上がっても構成員に分配しないで、組織の費用にあてるということです。これの対語になるのが、営利法人である株式会社などです。株式会社は利益を構成員(株主)に分配する点で非営利組織と異なります。もちろん、非営利組織といっても、実際の労働に対して給与や役員報酬を支払うことは問題ありません。

広く解釈しますとNPO法人とは、営利を目的とせず、利益を構成員に分配しない、民間の組織ということになります。

NPOと似た言葉に、NGO(Non Governmental Organization)がありますが、これは非政府組織のことで、国連憲章に基づく資格をもって、国際的に活動する民間組織を指します。

NPO法人の数は、2019年2月末の時点で、全国で51,613の法人が認証されています。

次に、法人格を持たず個人個人が活動する場合や任意団体と比べて、NPO法人にした場合のメリットについてご説明します。

NPOは行政庁の認証を得て成立する法人ですので、社会的信用が高まります。例えば契約関係では、法人名で契約を締結することができますので、任意団体の代表者が交代するたびに契約を結び直す必要はなくなります。また、法人名で銀行口座開設ができますし、法人名で不動産の所有や登記もできますので、構成員個人の財産と区別することができます。また、法律に定められた報告義務によって組織基盤が固まりますので、社会的信用が得やすくなります。結果として、地方公共団体からの委託事業も受けられたり、助成金や補助金なども受けやすくなります。

また、NPO法人の設立登記の時に、登録免許税が掛からず、設立時の費用負担が少なく済みます。ちなみに株式会社の場合は登録免許税が15万円ほどかかります。

次に、NPO法人となる場合のデメリットについてです。

これは、NPO法人として社会的信用が高くなるので、それに伴って責任も増すということです。非営利組織として、運営については株式会社等の営利法人以上に規制が多く、税務や労務については営利法人と同等の対応が必要となります。

具体的には次のようなものです。公益性の観点から様々な義務が課せられます。

  • 法人の会計・事業運営などはNPO法・定款の定めに従い、定款を変更するときは所轄庁の認証を受ける。
  • 毎事業年度終了後3ヶ月以内に事業報告、役員変更等を所轄庁に提出する。
  • 各報告書は、3年間事務所に備え置き、閲覧に供すること及び所轄庁でも同書類を同じく3年間閲覧させる。
  • 法人住民税、法人事業税、消費税など税法上の収益事業がある場合、納税する。
  • 職員を持った場合、最低賃金法の定めに従い賃金を保障し、労災・雇用保険と健康保険・厚生年金保険に加入する。

任意団体の時と比べて、書類作成の事務量が増えることにもなります。

また、申請時に提出する書類が多く、設立まで少なくても3~4か月かかることもデメリットとなります。

現在任意団体として活動している方々は、上記のようなメリット・デメリットも考慮して、NPO法人を設立するかどうか、検討してみることが必要だと思います。

次回は、NPO法人の設立手続きについてご案内いたします。