成年後見制度の利用の促進について

今回は、成年後見制度の利用促進についてご説明いたします。

今まで成年後見制度が十分に利用されてこなかったということを鑑みて、成年後見制度の利用の促進に関する法律が平成28年5月13日に施行されました。

その背景としましては、日本の高齢化率(65歳以上の人口の比率)が2017年には27.05%に達して、世界の中でもダントツで高齢化率が高い状況ですが、その中でも75歳以上の高齢者の増加が顕著であります。そして、認知症高齢者数が急増しており(75歳以上では27.5%)、2025年には1,000万人になるということです。

このようなことから、もっと成年後見制度を利用してもらおうということで、成年後見制度の利用の促進に関する法律が成立したわけです。ちなみに、平成30年度の制度利用者数は約22万人です。これはこの制度の利用を必要とする人の6分の1とのことです。

この法律の基本理念は3つあります。第3条に書かれていることですが、①ノーマライゼーション、②自己決定権の尊重、③身上保護の重視です。ノーマライゼーションとは、成年被後見人等の方が成年被後見人等でない方と同様に基本的人権が尊重されて共生社会を実現するということです。この基本理念を明文化したものが民法858条の「成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮」となります。以下がその条文です。

「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。」

ここで、成年後見制度とは、認知症高齢者や障がい者が、自由で平等な契約社会において、十分な判断能力がなく、適切な意思決定が困難である場合に、法的に支援するというものです。つまり、公的な監督のもとに財産を安全に管理し、生活・医療・介護・福祉の充実を図る制度ともいえます。

次に、成年後見制度の種類については、①ご本人が元気なうちに将来に備えて自ら支援者を選定しておく「任意後見」と、②判断能力が不十分になってしまったご本人に、国が支援者を選定する「法定後見」の2種類があります。

任意後見と法定後見の関係については、ご本人に判断能力が十分あるうちに任意後見を準備するという任意後見が優先します。これに対して法定後見は、任意後見の準備なしにご本人の判断能力が低下してしまった時に、国が後見人等支援者を選定するというわけです。

任意後見の仕組みは安心です。まず、ご本人は判断能力が十分な時に、行政書士等の任意後見受任者と契約を結びますが、その契約は公証役場の公証人が公正証書として残します。更に後見の登記もされます。契約後でも、ご本人が判断能力が低下するまでは当然何でもできます。自己決定権が尊重されます。この時期は任意後見受任者は何もすることはありません。

そして、ご本人の判断能力が十分でなくなったときに、任意後見受任者は家庭裁判所に対して、任意後見監督人の選任を申し立てます。家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて任意後見受任者は任意後見人として保護がスタートするわけです。つまり、ご本人の判断能力低下後は、公的監督による保護が行われるということです。 

最後に、こちらが成年後見制度の利用の促進に関する法律イメージ図です。

このように、事前準備をせずに法定後見という公的保護を受ける前にも、任意後見という安心できる仕組みがありますので、多くの方々に前向きに検討してもらいたいですね。

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