財産管理等委任契約書について

今回からしばらくは、成年後見・相続についてご説明いたします。

お話の前提として、現在一人暮らしで家族も身寄りも身近におらず、健康状態は今は元気だが、将来が心配である、という方々といたします。或いは、子供はいるが、転勤のため遠くにいるので、現在は一人暮らしの状況を前提といたします。この方を仮にAさんと呼ぶことにします。

そして、将来ご自身が認知症を発症した時や亡くなった時のことが不安なため、身近な街の法律家である行政書士に相談に行き、必要な業務を行政書士に依頼するという設定で話を進めてまいります。

現在からお亡くなりになるまでの間を3つのステージに分けます。第一に、健康で認知症でもない現在から認知症が発症してしまうまでの間、第二に、認知症発症からお亡くなりになるまでの間、第三に、お亡くなりになった時、の3つのステージに分けてご説明していきます。

まずは第一ステージについてです。Aさんは現在元気で判断能力もある(認知症ではない)状態です。Aさんは行政書士に電話をし、相談しに行きます。そこで、ご自身の生活環境、家族関係、健康状態等を説明し、将来認知症になった場合、亡くなった場合に備えてどのような準備をしていけばよいか、行政書士に聞きます。

行政書士はまず相談料を伝えますが、相談については無料で行っている行政書士が多いです。その他、今後業務が発生した場合の行政書士の報酬額や、公正証書を作成する場合の法定費用などの概算を見積書にして伝えます。着手金についてもここで提示します。

Aさんが納得したら、行政書士との間で契約書を締結します。内容は、「財産管理等委任契約」と「任意後見契約」です。

財産管理等委任契約は、Aさんが行政書士に対して、Aさんの財産に関する事務の全部又は一部について、代理権を与えるというものです。代理権を与えるといっても、Aさんの行為が制限されることはありません。この契約があれば、もしAさんが身体上の障害がある場合(例えば事故で入院したとき)に、行政書士に契約等の法律行為を行ってもらうこともできます。そして、行政書士の義務の履行を監督する監督人を選任することが可能です。ただし、この時期はAさんはまだ元気でご自分で監督できますし、別途監督人への報酬も発生してしまいますから、必ずしもおく必要はありません。

そして、この財産管理等委任契約は、公証人役場に行って公正証書の形で作成するのが望ましいです。公証役場には元検察官や裁判官の方々がいて、こちらが用意した文書や話した内容について、それを文書化してくれる場所で、その文書を公正証書と呼びます。公正証書の信頼性は圧倒的に高いです。ご自宅の周辺にも公証役場があるはずですので、ホームページなどで調べてみてください。公正証書にした場合、当然費用(公証役場への手数料+行政書士への報酬)が掛かりますが、文書の信頼性を考えると強くお勧めできます。

次回は、任意後見契約書についてご案内いたします。

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