葬祭料(葬祭給付)について 日本で働く外国人向け

今回は、外国人を雇用している受入れ企業が知っておきべき労災保険の基礎のうち、葬祭料(葬祭給付)についてご説明いたします。

葬祭料(葬祭給付)の支給対象となる方は、必ずしも遺族とは限りませんが、通常は葬祭を行うのにふさわしい遺族が該当します。

尚、葬祭を執り行う遺族がなく、社葬として死亡労働者の会社において葬祭を行った場合は、葬祭料(葬祭給付)はその会社に対して支給されます。

請求の内容

葬祭料(葬祭給付)の額は、315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額です。この額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分が支給額となります。

請求の手続き

所轄の労働基準監督署長に、葬祭料請求書(様式第16号)又は葬祭給付請求書(様式第16号の10)を提出します。

請求に当たって必要な添付書類 ⇒ 死亡診断書、死体検案書、検視調書、またはそれらの記載事項証明書など、被災労働者の死亡の事実、死亡の年月日を証明することができる書類。但し、遺族(補償)給付の請求書を提出する際に添付してある場合には、必要ありません。

時効

葬祭料(葬祭給付)は、被災労働者が亡くなった日の翌日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅しますので注意が必要です。

遺族(補償)一時金について 日本で働く外国人向け

今回は、外国人を雇用している受入れ企業が知っておきべき労災保険の基礎のうち、遺族(補償)一時金についてご説明いたします。

遺族(補償)給付には、「遺族(補償)年金」と「遺族(補償)一時金」の2種類がありますが、このうち「遺族(補償)一時金」については、次のいずれかの場合に支給されます。

① 労働者の死亡の当時、遺族(補償)年金を受ける遺族がいない場合

② 遺族(補償)年金の受給権者が最後順位者まですべて失権した時、受給権者であった遺族の全員に対して支払われた年金の額及び遺族(補償)年金前払い一時金の額の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たない場合

受給権者

遺族(補償)一時金の受給権者は、次のうち最先順位にある方(2.3については、子・父母・孫・祖父母の順序)で、同じ順位の方が2人以上いる場合は、全員が受給権者となります。

  1. 配偶者
  2. 労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母
  3. その他の子・父母・孫・祖父母
  4. 兄弟姉妹

給付の内容

上記①の場合 ⇒ 給付基礎日額の1,000日分が支給されます。また、遺族特別支給金として300万円が支給されるほか、遺族特別一時金として算定基礎日額の1,000日分が支給されます。

上記②の場合 ⇒ 給付基礎日額の1,000日分から、既に支給された遺族(補償)年金などの合計額を差し引いた差額が支給されます。受給権者であった遺族の全員に対して支払われた遺族特別年金の合計額が算定基礎日額の1,000日分に達していない時は、遺族特別一時金として算定基礎日額の1,000日分とその合計額との差額が支給されます。(遺族特別支給金は支給されません)

請求の手続き

所轄の労働基準監督署長に、遺族補償一時金支給請求書(様式第15号)、または遺族一時金支給請求書(様式第16号の9)を提出します。 尚、特別支給金の支給申請は、原則として遺族(補償)一時金の請求と同時に行うこととなっています。様式は、遺族(補償)一時金と同じです。

時効

遺族(補償)一時金は、遺族(補償)年金の場合と同様に被災者が亡くなった日の翌日5年を経過すると、時効により請求権が消滅しますので注意が必要です。

遺族(補償)給付 ~ 日本で働く外国人向け ~

今回は、外国人を雇用している受入れ企業が知っておきべき労災保険の基礎のうち、遺族(補償)給付についてご説明いたします。

労働者が、業務上の事由または通勤により死亡した時、その遺族に対して、遺族(補償)給付が支給されます。

遺族(補償)給付には、「遺族(補償)年金」と「遺族(補償)一時金」の2種類があります。今回はこの内の遺族(補償)年金についてです。

遺族(補償)年金

遺族(補償)年金は、受給する資格を有する遺族(受給資格者)のうちの最先順位者(受給権者)に対して支給されます。

受給資格者

遺族(補償)年金の受給資格者となるのは、労働者の死亡当時その者の収入によって生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹ですが、妻以外の遺族については、労働者の死亡の当時に一定の高齢又は年少であるか、一定の障害の状態にあることが必要です。

尚、「労働者の死亡の当時、労働者の収入によって生計を維持していた」とは、専ら、又は主として労働者の収入によって生計を維持されていることを要せず、労働者の収入によって生計の一部を維持していれば足り、いわゆる「共稼ぎ」の場合もこれに含まれます。

受給権者をなる順位は次のとおりです。

  1. 妻、又は60歳以上か一定障害の夫
  2. 18歳に達する日以後の最初の3月31日までに間にあるか一定障害の子
  3. 60歳以上か一定障害の父母
  4. 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の孫
  5. 60歳以上か一定障害の祖父母
  6. 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか60歳以上又は一定障害の兄弟姉妹
  7. 55歳以上60歳未満の夫
  8. 55歳以上60歳未満の父母
  9. 55歳以上60歳未満の祖父母
  10. 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹
  • 一定の障害とは、障害等級第5級以上の身体障碍をいいます。
  • 配偶者の場合、婚姻の届出をしていなくても、事実上婚姻関係と同様の事情にあった方も含まれます。また、労働者の死亡の当時、胎児であった子は、生まれた時から受給資格者となります。
  • 最先順位者が死亡や再婚などで受給権を失うと、その次の順位の方が受給権者となります。
  • 7.~10.の55歳以上60歳未満の夫・父母・祖父母・兄弟姉妹は、受給権者となっても、60歳になるまでは年金の支給は停止されます。

給付の内容

遺族の数などに応じて、遺族(補償)年金、遺族特別支給金、遺族特別年金が支給されます。尚、受給権者が2人以上いるときは、その額を等分した額がそれぞれの受給権者が受ける額となります。

遺族数  遺族(補償)年金   遺族特別支給金(一時金)   遺族特別年金

1人 給付基礎日額の153日分※    300万円     算定基礎日額の153日分※

2人   〃   の201日分     300万円        〃   の201日分

3人   〃   の223日分     300万円        〃   の223日分

4人以上  〃  の245日分     300万円        〃   の245日分

※55歳以上の妻又は一定の障害状態にある妻の場合は給付基礎日額の175日分

請求の手続き

所轄の労働基準監督署長に、遺族補償年金支給請求書(様式第12号)、または遺族年金支給請求書(様式第16号の8)を提出します。尚、特別支給金の支給申請は、原則として遺族(補償)給付の請求と同時に行うこととなっています。様式は、遺族(補償)給付と同じです。

時効

遺族(補償)年金は、被災者が亡くなった日の翌日から5年を経過すると、時効により請求権が消滅しますので注意が必要です。

障害(補償)給付について 日本で働く外国人向け

今回は、外国人を雇用している受入れ企業として知っておきべき労災保険の基礎のうち、障害(補償)給付についてご説明いたします。

業務上の事由または通期による負傷や疾病が治ったとき、身体に一定の障害が残った場合には、傷害補償給付(業務災害の場合)、または障害給付(通勤災害の場合)が支給されます。

給付の内容

残存障害が、障害等級表に掲げる障害等級に該当するとき、その障害の程度に応じて、それぞれ下記の通り支給されます。

  • 障害等級第1級から第7級に該当するとき ⇒ 障害(補償)年金、障害特別支給金、障害特別年金
  • 障害等級第8級から第14級に該当するとき ⇒ 障害(補償)一時金、障害特別支給金、障害特別一時金

障害等級別の給付等の内容一覧表はこちらの1ページ目に載っています。

同一の災害により、既に傷病特別支給金を受けた場合は、その差額となります。また、障害等級が第1級の方又は第2級の胸腹部臓器、精神・神経の障害を有している方が、現に介護を受けている場合は、介護(補償)給付を受給することができます。

請求の手続き

所轄の労働基準監督署長に、「障害補償給付支給請求書」(様式第10号)又は「障害給付支給請求書」(様式第16号の7)を提出します。

時効

障害(補償)給付は、傷病が治った日の翌日から5年を経過すると、時効により請求権が消滅しますので注意が必要です。

傷病(補償)年金について 日本で働く外国人向け

今回は、外国人を雇用している受入れ企業として知っておきべき労災保険の基礎知識のうち、傷病(補償)年金についてご説明いたします。

業務上の事由や通勤による負傷、疾病の療養開始後、1年6か月を経過した日又はその日以後、次の要件に該当するときに、傷病補償年金(業務災害の場合)、または傷病年金(通勤災害の場合)が支給されます。

  1. その負傷又は疾病が治っていないこと
  2. その負傷又は疾病による障害の程度が傷病等級表の傷病等級に該当すること

給付の内容

傷病等級に応じて、傷病(補償)年金、傷病特別支給金及び傷病特別年金が支給されます。 

傷病等級  傷病(補償)年金  傷病特別支給金(一時金)  傷病特別年金

第1級 給付基礎日額の313日分   114万円       算定基礎日額の313日分

第2級  〃    の277日分   107万円         〃    277日分

第3級  〃    の245日分   100万円         〃    245日分

年金の支給月

傷病(補償)年金は、上記の1.2.の支給要件に該当することとなった月の翌月分から支給され、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の6期に、それぞれの前2か月分が支払われます。

尚、傷病等級が第1級の方又は第2級の胸腹部臓器、精神・神経の障害を有している方が、現に介護を受けている場合は、介護(補償)給付を受給することができます。

請求の手続き

傷病(補償)年金の支給・不支給の決定は、所轄の労働基準監督署長の職権によって行われますので、請求手続きは必要ありませんが、療養開始後1年6か月を経過しても傷病が治っていない時は、その後1か月以内に「傷病の状態等に関する届」(様式第16号の2)を所轄の労働基準監督署長に提出する必要があります。

休業(補償)給付について 日本で働く外国人向け

今回は、外国人を雇用する企業が知っておきべき労災保険の基本のうち、休業(補償)給付についてご説明いたします。

労働者が、業務上の事由又は通勤による負傷や疾病による療養のため労働することができず、そのために賃金を受けていない時、休業補償給付(業務災害の場合)、または休業給付(通勤災害の場合)が休業4日目から支給されます。

給付の内容

次の3つの要件を満たす場合に、休業4日目から、休業(補償)給付と休業特別支給金が支給されます。

  1. 業務上の事由又は通勤による負傷や疾病による療養のため、
  2. 労働することができないため、
  3. 賃金を受けていない

支給額は次の通りです。

  • 休業(補償)給付=(給付基礎日額の60%)x休業日数
  • 休業特別支給金=(給付基礎日額の20%)x休業日数

休業の初日から3日目までを待機期間といい、この間は業務災害の場合、事業主が労働基準法の規定に基づく休業補償(1日につき平均賃金の60%)を行うこととなります。また、通院のため、労働者が所定労働時間の一部についてのみ労働した場合は、給付基礎日額からその労働に対して支払われる賃金の額を控除した額の60%に当たる額が支給されます。

請求の手続き

所轄の労働基準監督署長に、「休業補償給付支給請求書」(様式第8号)又は「休業給付支給請求書」(様式第16号の6)を提出します。

時効

休業(補償)給付は、療養のため労働することができないため賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅しますので注意が必要です。

療養(補償)給付について 日本で働く外国人向け

労働者が、業務又は通勤が原因で負傷したり、疾病にかかって療養を必要とする場合には、この傷病が「治癒」するまでの間、療養補償給付(業務災害の場合)、または療養給付(通勤災害の場合)が支給されます。

給付の内容   療養(補償)給付には、「療養の給付」と「療養の費用の支給」があります。

  • 療養の給付」は、労災病院や指定医療機関・薬局など(以下「指定医療機関など」)で、無料で治療や薬剤の支給を受けられる現物給付です。
  • 療養の費用の支給」は、近くに指定医療機関がないなどの理由で、指定医療機関以外の医療機関や薬局などで療養を受けた場合に、その療養にかかった費用を支給する現金給付です。
  • 給付の対象となる療養の範囲や期間はどちらも同じです。療養(補償)給付は、治療費、入院料、移送費など通常療養のために必要なものが含まれ、傷病が治癒(症状固定)するまで行われます。

請求の手続き

  • 療養の給付を請求する場合    療養を受けている指定医療機関などを経由して、所轄の労働基準監督署長に、療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)、又は療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)を提出します。
  • 療養の費用を請求する場合    所轄の労働基準監督署長に、療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)、又は療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5)を提出します。尚、薬局から薬剤の支給を受けた場合には様式第7号(第16号の5)(2)を、柔道整復師から手当を受けた場合には様式第7号(第16号の5)(3)を、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師から手当を受けた場合には様式第7号(第16号の5)(4)を、訪問看護事業者から訪問看護を受けた場合には様式第7号(第16号の5)(5)を提出します。
  • 指定医療機関などを変更するとき    既に指定医療機関などで療養の給付を受けている方が、帰郷などの理由で他の指定医療機関などに変更するときは、変更後の指定医療機関などを経由して所轄の労働基準監督署長に、「療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」(様式第6号)、または「療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等変更届」(様式第16号の4)を提出します。

通院費について

通院費については、傷病労働者の居住地又は勤務先から、原則2㎞の通院であって、つぎの1.から3.のいずれかに該当する場合に支給対象となります。

  1. 同一市町村内の適切な医療機関へ通院した時 尚、適切な医療機関とは、傷病の診察に適した医療機関をいいます。
  2. 同一市町村内に適切な医療機関がないため、隣接する市町村内の医療機関へ通院した時(同一市町村内に適切な医療機関があっても、隣接する市町村内の医療機関のほうが通院しやすいときなども含む)
  3. 同一市町村内、隣接する市町村内に適切な医療機関がないため、それらの市町村を超えた最寄りの医療機関へ通院した時

時効

療養の給付については、現物給付であることから、請求権の時効は問題となりませんが、療養の費用は費用の支出が確定した日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅することとなりますので注意が必要です。

労災保険の用語の定義(日本で働く外国人向け)その2

今回は、通勤災害についてご説明いたします。

通勤災害

通勤災害とは、労働者が通勤によって被った傷病などのことをいいます。

通勤とは   就業に関し、次の1.から3.の移動を合理的な経路活手段で行うことをいいます。

  1. 住居と就業の場所(業務を開とき始し、終了する場所)との間の往復
  2. 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動(複数就業者の事業場間の移動)
  3. 単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動

通勤の範囲   移動の経路を逸脱、又は中断した場合は、逸脱又は中断の間と、その後の移動は通勤となりません。但し、日用品の購入やその他これに準ずる行為を最小限度の範囲で行う場合には、合理的経路に戻った後は再び通勤とみなされます。

給付基礎日額とは 

給付基礎日額は、原則として平均賃金に相当する額です。(労働基準法第12条)平均賃金は、原則として、これを算定すべき事由が生じた日の前の3か月間に、その労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(休日などを含めた歴日数)で除して得た額となります。平均賃金の算定基礎となる賃金とは、名称に関わらず、労働の対価として使用者から支払われたものをいいます。ただし、結婚手当など臨時に支払われた賃金、ボーナスなど3か月を超える期間ごとに支払われた賃金などは、これに参入しないことになります。

<例外>

①平均賃金相当額を給付基礎日額とすることが適当でないと認められる場合には、給付基礎日額の算定方法に特例が設けられています。

 (a)平均賃金の算定期間中に業務外の傷病の療養のため休業した期間がある場合

 (b)じん肺患者が粉塵作業以外に作業転換した場合

②休業(補償)給付については、療養を始めてから1年6か月を経過した場合、年齢階層別の最低限度額、最高限度額の適用を受けます。年金給付については、年金が支給される最初の月から、年齢階層別の最低限度額、最高限度額の適用を受けます。 

算定基礎日額とは

算定基礎日額とは、原則として、業務上、又は通勤による負傷や死亡の原因である事故が発生した場合、又は診断によって病気にかかったことが確定した日以前1年間にその労働者が事業主から受けた特別給与の総額を算定基礎年額として、これを365で割って得た額です。

特別給与とは、給与基礎日額の算定の基礎から除外されているボーナスなど3か月を超える期間ごとに支払われる賃金をいいます。(結婚手当など、臨時に支払われた賃金は含まれません)尚、特別給与の総額が給付基礎年額(給付基礎日額の365倍に相当する額)の20%に相当する額を上回る場合には、給付基礎年額の20%に相当する額が算定基礎年額となります。(限度額150万円)

 

労災保険の用語の定義(日本で働く外国人向け)

今回は、厚生労働省が出している日本で働く外国人向けの労働保険請求のためのガイドブックから、用語の定義についていくつかご紹介いたします。

業務災害

業務災害とは、労働者が業務を原因として被った傷病など(負傷・疾病・障害・死亡)のことをいいます。業務と傷病などとの間に一定の因果関係があることを「業務上」と呼んでいます。労働者ではない事業主研修生は、原則として補償を受けることはできません

業務上の負傷とは

どのような災害が業務災害と認められるかについては、次の3つの場合に分けて考えます。

  1. 事業場の施設内で業務に従事している場合、所定労働時間内や残業時間内に事業場の施設内(会社事務所・工場内)で業務に従事している場合、特段の事情がない限りは業務災害と認められます。但し、以下の場合は業務災害とは認められません。

  ①労働者が業務中に私的行為を行い、それにより災害を被った場合

  ②労働者が故意に災害を発生させた場合

  ③労働者が個人的な恨みで第三者から暴行を受けた場合

 2.事業場の敷地内で業務に従事していない場合、休憩時間や就業前後など実際に業務をしていない場合に私的な行為により発生した災害は、業務災害とは認められません。但し、事業場の施設・設備や管理状況などが原因で発生した災害は業務災害となります。また、トイレなどの生理的行為の際に生じた災害は業務災害となります。

 3.事業場の施設外で業務に従事している場合、出張や営業などについては、積極的な私的行為を行うなど特段の事情がない限り、業務災害と認められます。

業務上の疾病とは

次の3つの要件が満たされる場合には、原則として業務上の疾病と認められます。

  1. 労働の場に有害因子が存在していること   有害な物理的因子、化学物質、身体に過度の負担のかかる作業などが業務に内在している場合です。例えば、石綿(アスベスト)などです。
  2. 健康障害を起こしうるほどの有害因子にさらされたこと
  3. 発症の経緯、病態が医学的にみて妥当であること  業務上の疾病は、労働者が業務に内在する有害因子に接触した結果、発症します。そのため、病気は有害因子にさらされた後に発症したものでなければなりません。発症の時期は、有害因子の性質や接触条件により異なります。

次回は、用語の定義のうち、通勤災害についてご説明いたします。

外国人向け労災保険請求のためのガイドブックについて

厚生労働省 労働基準局 労災補償部補償課は、日本で働く外国人向けに「労災保険請求のためのガイドブック」を発行しています。

ここに書かれている内容は定義も含めて基本的なことですが、受入れ企業としても理解しておきたい内容ですので、少しご紹介いたします。今回は労災保険の概要についてです。

まず、労災保険とは、労働者が業務や通勤が原因で、負傷したり、病気になったり、更には死亡した時に、治療費など必要な保険給付を行う制度です。外国人でも日本国内で働いている限り、労災保険が適用されます。原因・事由が仕事によるものは、業務災害に分類され、労災保険の適用となります。原因・事由が通勤によるものは、通勤災害に分類され、労災保険の適用となります。その他の原因・事由によるその他の災害については、健康保険の適用となります。従って、労働災害に健康保険は使えません。

次に、労災保険給付の種類についてです。

  • 療養(補償)給付:業務又は通勤が原因となった傷病の療養を受けるときの給付
  • 休業(補償)給付:業務又は通勤が原因となった傷病の療養のため、労働することができず、賃金を受けられない時の給付
  • 傷病(補償)年金:業務又は通勤が原因となった傷病の療養開始後、1年6か月たっても傷病が治癒(病状固定)しないで障害の程度が傷病等級に該当するときの給付
  • 障害(補償)給付:業務又は通勤が原因となった傷病が治癒(病状固定)して障害等級に該当する身体障害が残ったときの給付
  • 遺族(補償)給付:労働者が死亡した時の給付
  • 葬祭料・葬祭給付:労働者が死亡し、葬祭を行った時の給付
  • 介護(補償)給付:障害(補償)年金または傷病(補償)年金の一定の障害により、現に介護を受けている時の給付

上記の通り、様々な種類の給付があります。