技能実習制度 不正行為に対する処分について

今回は、技能実習制度における、不正行為に対する処分についてご説明いたします。

一昨日令和元年9月6日、法務省出入国在留管理庁と厚生労働省は、複数の企業について、技能実習計画の認定の取り消しと改善の命令を発表しました。その中で、日本を代表する企業である日立製作所が改善命令処分を受けています。出入国在留管理庁の発表はこちらです。厚生労働省からの発表はこちらです。内容は同じです。

技能実習の現行制度によると、外国人技能実習機構や主務大臣等は、定期的な実地検査、技能実習生からの相談・申告、労働基準監督機関・地方入管局等からの通報などに基づき、実地検査等を行うことになります。その結果、許可基準違反や法令違反等があれば、主務大臣等が、事業者名等を公表し、①許可・認定の取り消し、②業務停止命令、③改善命令の処分を行います。

①許可・認定の取消しは、重大な許可・認定基準違反、法令違反等があれば、この処分となります。

②業務停止命令は、許可基準違反や法令違反に対し、期間を定めて業務停止を命令するもので、同時に改善命令を出すこともあります。

③改善命令は、出入国・労働関係法令(技能実習法を含む)違反があれば、期限を定めて改善を命令するものです。

※業務停止命令・改善命令に違反した場合の罰則もあります。

今回の発表資料を読みますと、日立製作所のへの処分理由としては、認定計画に従って技能実習を行わせていなかったこととしており、改善命令の内容としては、認定計画に従った適正な技能実習を実施するための体制の構築に関するものとしています。

ここで、技能実習受入れ企業として再度認識が必要なこととしては、新しい技能実習制度では、開発途上地域等の経済発展を担う人づくりに協力するという制度趣旨を徹底するため、管理監督体制を強化するとともに、技能実習生の保護等を図るとされていることです。

介護職種の追加要件について

今回は、技能実習制度における「介護職種」の追加要件について概略をご説明いたします。

介護については、平成29年11月に技能実習の対象職種に追加されましたが、高齢者へのサービス提供が仕事となることから、介護修得レベルの追加要件や監理団体による実習実施機関に対する管理の徹底等、追加の要件が課されています。

まず、技能実習生に関しての要件ですが、技能実習制度本体の要件に加えて、以下の要件を満たす必要があります。

  • 第1号技能実習(1年目) 日本語能力試験のN4に合格している者
  • 第2号技能実習(2年目) 日本語能力試験のN3に合格している者

次に、実習実施者・実習内容に関する要件ですが、技術実習制度本体の要件に加えて、以下の要件を満たす必要があります。

  • 技能実習指導員のうち1名以上は、介護福祉士の資格を有する者その他これと同等以上の専門的知識及び技術を有すると認められる者(看護師等)であること。
  • 技能実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を選任していること。
  • 技能実習を行わせる事業所が、介護等の業務(利用者の居宅においてサービスを提供する業務を除く)を行うものであること。
  • 技能実習を行わせる事業所が、開設後3年以上経過していること。
  • 技能実習生に夜勤業務その他少人数の状況下での業務又は緊急時の対応が求められる業務を行わせる場合にあっては、利用者の安全の確保のために必要な措置を講ずることとしていること。具体的には、技能実習制度の趣旨に照らし、技能実習生以外の介護職員を同時に配置することが求められるほか、業界ガイドラインにおいても技能実習生以外の介護職員と技能実習生の複数名で業務を行う旨を規定していることや、夜勤業務等を行うのは2年目以降の技能実習生に限定する等の努力義務を業界ガイドラインに規定することなどです。
  • 技能実習を行う事業所における技能実習生の数が一定数を超えないこと。
  • 入国後講習については、基本的な仕組みは技能実習法本体によるが、日本語学習(240時間(N3程度取得者は80時間))と介護導入講習(42時間)の受講を求めることとする。また、講師に一定の要件を設ける。

最後に、監理団体に関する要件についてですが、「介護」職種の場合は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 次のいずれかに該当する法人であること。①商工会議所・商工会、中小企業団体、職業訓練法人、公益社団法人又は公益財団法人、②その法人の目的に介護事業の発展に寄与すること等が含まれる全国的な医療又は介護に従事する事業者から構成される団体(その支部を含む)であること。
  • その役職員に介護職として5年以上の経験を有する介護福祉士等(看護師等)がいるものであること。
  • 「介護」職種における第3号技能実習の実習監理及び受入れ人数枠拡大の可否(いわゆる「介護」職種における優良要件)は、「介護」職種における実績等をもとに判断すること。

以上のように、「介護」職種の作業の特有性を踏まえて、他の職種の要件に更に要件を加えて、介護サービスの質を担保するとともに、利用者の不安を招かないようにしているわけです。

外国の送出し機関について

今回は、技能実習制度における監理団体の許可基準のひとつである、「基準を満たす外国の送出機関と、技能実習生の取次ぎに係る契約を締結していること」の、「外国の送出機関」について、ご説明いたします。

技能実習法第23条第2項では、外国の送出機関とは、団体監理型技能実習生になろうとする者からの団体監理型技能実習に係る求職の申込みを適切に日本の監理団体に取り次ぐことができる者として主務省令で定める要件に適合するものとされています。

そこで、外国の送出機関の要件にはどんなものがあるかというと、下記のようになっています。

  1. 所在する国の公的機関から技能実習の申込みを適切に日本の監理団体に取り次ぐことができるものとして推薦をうけていること
  2. 制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者のみを適切に選定して、日本への送り出しを行なうこと
  3. 技能実習生等から徴収する手数料その他の費用について、算出基準を明確に定めて公表するとともに、その費用について技能実習生等に対して明示し、十分に理解をさせること
  4. 技能実習を修了して帰国した者が、修得した技能を適切に活用できるよう、就職先のあっせんその他の必要な支援を行うこと
  5. フォローアップ調査への協力等、法務大臣、厚生労働大臣、外国人技能実習機構からの要請に応じること
  6. 送出し機関又はその役員が、日本又は所在する国の法令に違反して、禁錮以上の刑又はこれに相当する外国の法令による刑に処せられ、刑の執行の終了等から5年を経過しない者でないこと
  7. 所在する国又は地域の法令に従って事業を行うこと
  8. 保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、技能実習生の日本への送出しに関連して、技能実習生又はその家族等の金銭又はその他の財産を管理しないこと
  9. 技能実習に係る契約不履行について、違約金を定める契約や不当に金銭その他の財産の移転をする契約を締結しないこと
  10. 技能実習生又はその家族等に対して、8,9の行為が行われていないことを技能実習生から確認すること
  11. 過去5年以内に偽造・変造された文書の使用などの行為を行っていないこと
  12. その他、技能実習の申込みを適切に日本の監理団体に取り次ぐために必要な能力を有すること

次に、日本との間で2国間取決めを作成した国について、送出し機関の政府が、上記1から12までの確認を行い、適切な送出し機関を認定することになっています。

平成31年3月時点では、次の13か国との間で技能実習に関する2国間取決めが交わされています。ベトナム、カンボジア、インド、フィリピン、ラオス、モンゴル、バングラデシュ、スリランカ、ミャンマー、ブータン、ウズベキスタン、パキスタン、タイ。

外部役員及び外部監査の措置について

今回は、技能実習制度における監理団体の許可基準のうち、外部役員及び外部監査の措置について、ご説明いたします。

技能実習法第25条第1項第5号では、監理事業を行おうとする者は、外部役員を置いていること又は外部監査の措置を講じていることとされています。

まず、外部役員についてですが、外部役員の役割は、実習実施者に対する監査等の業務が適正に実施されているかの確認を、法人内部において担当することとなります。

外部役員の要件には次のようなものがあります。

① 過去3年以内に指定された講習を受講した者(但し経過措置として令和2年3月31日まで適用はなし)

② 下記に該当する者でないこと

  1. 実習監理を行う対象の実習実施者又はその現役若しくは過去5年以内の役職員
  2. 過去5年以内に実習監理を行った実習実施者の現役又は過去5年以内の役職員
  3. 1、2の者の配偶者又は二親等以内の親族
  4. 申請者(監理団体)の現役又は過去5年以内の役職員
  5. 申請者(監理団体)の構成員(申請者が実習監理する団体監理型技能実習の職種に係る事業を営む構成員に限る)又はその現役又は過去5年以内の役職員
  6. 傘下以外の実習実施者又はその役職員
  7. 他の監理団体の役職員
  8. 申請者(監理団体)に取次ぎを行う外国の送出し機関の現役又は過去5年以内の役職員
  9. 過去に技能実習に関して不正等を行った者など、外部役員による確認の公正が害される恐れがあると認められる者

但し、4と7について、監理団体に係る業務の適正な執行の指導監督に関する専門的な知識と経験を有する役員(専門的な知識の経験に基づき現に監理事業に従事している員外役員)及び指定外部役員に指定されている役員は外部役員として認められます。

③ 外部役員は、監理団体の各事業所について監査等の業務の遂行状況を3ヶ月に1回以上確認し、その結果を記載した書類を作成すること。

次に、外部監査の措置についてですが、外部監査人(法人でも可能です)の役割は、実習実施者に対する監査等の業務が適正に実施されているかの監査を、法人外部から実施することとなります。

外部監査人の要件と業務は次の通りです。

① 過去3年以内に指定された講習を受講した者でなければなりません。(但し経過措置として令和2年3月31日まで適用はなし)

② 外部監査人は、上記の1から9までに相当する者及び法人であって監理団体の許可の欠格事由に該当する者、個人であって監理団体の許可に係る役員関係の欠格事由に該当する者であってはなりません。

③ 外部監査人は、監理団体の各事業所について監査等の業務の遂行状況を3ヶ月に1回以上確認し、その結果を記載した書類を作成すること。

④ 外部監査人は、監理団体が行う実習実施者への監査に、監理団体の各事業所につき1年に1回以上同行して確認し、その結果を記載した書類を作成すること。

外部役員を置くにせよ、外部監査を選ぶにせよ、外部からしっかりとチェックしてもらうという心構えが大切となります。