新しい特定活動の在留資格

2019年5月末から、外国人の就労可能な在留資格の一つである「特定活動」に、本邦大学卒業者というものが新設されました。これは日本の大学や大学院で習得した知識及び高い日本語能力を活用した業務に従事する場合とされています。

就労活動範囲としては、従来より広い活動が可能となる在留資格です。

要件としては次の2つです。

①日本の4年制大学又は大学院を卒業していること

②日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を有すること 

 ※但し、大学又は大学院において「日本語」を専攻して卒業したものにおいては②の要件を満たすものとされます。これは外国の大学での「日本語」専攻でも良いとされています。

つまり、外国の大学で「日本語」を専攻して卒業した外国人は、要件を満たすということになります。

この在留資格を上手に活用することで、外国人社員の雇用形態の幅が更に広がりそうですね。

永住許可申請の必要書類更新について

令和元年5月31日に、永住許可に関するガイドラインが改定されました。これに伴い、永住許可申請に必要な書類も更新されています。新ガイドラインはこちらです。

申請人が「日本人の配偶者等」をはじめ、全ての場合において、以前の必要書類から増えております。公的義務、例えば納税、公的年金、公的医療保険料の納付を証明する資料が明記されています。

適用は令和元年7月1日(月)の申請分からとなります。但し、それより前に申請した方でも、審査の過程で追加資料の提出を求められることもあるとのことです。

ちなみに、日本人の配偶者等」が申請するときの提出書類はこちらです。

永住許可の審査も厳格に行われていくようです。

ベトナムとの特定技能協力覚書 交換

2019年7月1日に、外国人の新しい在留資格「特定技能」に関して、日本とベトナムとの間で、悪質な仲介業者等の排除等を目的とする協力覚書の交換が行われました。

この中では、(ベトナムの省から許可を与えられた)ベトナム国内の送出機関が特定技能外国人を送り出すことが明記されています。つまり、技能実習と同様に、特定技能でもベトナム国内の送出機関が登場しているわけです。

特定技能外国人の雇用の仕組みは、基本的には外国の送出機関は登場しませんが、ベトナムとの間では、上記のような結果となったようです。

この協力覚書の目的が悪質な仲介業者の排除となっているため、中身を見ると、日本の省庁の約束とかベトナムの省の約束とかもたくさん書かれていて、とにかく悪質仲介業者を排除するという姿勢が感じられます。こちらが法務省が出している和文仮訳です。

いずれにしても、日本にやってくる特定技能外国人が幸せになれないような状況は作ってはいけないですね。

成年後見制度の利用の促進について

今回は、成年後見制度の利用促進についてご説明いたします。

今まで成年後見制度が十分に利用されてこなかったということを鑑みて、成年後見制度の利用の促進に関する法律が平成28年5月13日に施行されました。

その背景としましては、日本の高齢化率(65歳以上の人口の比率)が2017年には27.05%に達して、世界の中でもダントツで高齢化率が高い状況ですが、その中でも75歳以上の高齢者の増加が顕著であります。そして、認知症高齢者数が急増しており(75歳以上では27.5%)、2025年には1,000万人になるということです。

このようなことから、もっと成年後見制度を利用してもらおうということで、成年後見制度の利用の促進に関する法律が成立したわけです。ちなみに、平成30年度の制度利用者数は約22万人です。これはこの制度の利用を必要とする人の6分の1とのことです。

この法律の基本理念は3つあります。第3条に書かれていることですが、①ノーマライゼーション、②自己決定権の尊重、③身上保護の重視です。ノーマライゼーションとは、成年被後見人等の方が成年被後見人等でない方と同様に基本的人権が尊重されて共生社会を実現するということです。この基本理念を明文化したものが民法858条の「成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮」となります。以下がその条文です。

「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。」

ここで、成年後見制度とは、認知症高齢者や障がい者が、自由で平等な契約社会において、十分な判断能力がなく、適切な意思決定が困難である場合に、法的に支援するというものです。つまり、公的な監督のもとに財産を安全に管理し、生活・医療・介護・福祉の充実を図る制度ともいえます。

次に、成年後見制度の種類については、①ご本人が元気なうちに将来に備えて自ら支援者を選定しておく「任意後見」と、②判断能力が不十分になってしまったご本人に、国が支援者を選定する「法定後見」の2種類があります。

任意後見と法定後見の関係については、ご本人に判断能力が十分あるうちに任意後見を準備するという任意後見が優先します。これに対して法定後見は、任意後見の準備なしにご本人の判断能力が低下してしまった時に、国が後見人等支援者を選定するというわけです。

任意後見の仕組みは安心です。まず、ご本人は判断能力が十分な時に、行政書士等の任意後見受任者と契約を結びますが、その契約は公証役場の公証人が公正証書として残します。更に後見の登記もされます。契約後でも、ご本人が判断能力が低下するまでは当然何でもできます。自己決定権が尊重されます。この時期は任意後見受任者は何もすることはありません。

そして、ご本人の判断能力が十分でなくなったときに、任意後見受任者は家庭裁判所に対して、任意後見監督人の選任を申し立てます。家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて任意後見受任者は任意後見人として保護がスタートするわけです。つまり、ご本人の判断能力低下後は、公的監督による保護が行われるということです。 

最後に、こちらが成年後見制度の利用の促進に関する法律イメージ図です。

このように、事前準備をせずに法定後見という公的保護を受ける前にも、任意後見という安心できる仕組みがありますので、多くの方々に前向きに検討してもらいたいですね。